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0025_董萌萌イリナ

旧ソビエト連邦時代にレニングラード(現在のサンクトペテルブルグ)で生まれ、その一ヶ月後にソビエト連邦が崩壊。両親と共に中国に帰国し、南京のインターナショナルスクールを卒業後カリフォルニア大学バークレー校を卒業。日本の美容学校を経てヘア・メイクの仕事に就く。子供を育てながらも将来はロンドンでヘアメイクの仕事をしてみたいしアフリカにも行ってみたいという野望を持つ、ロシアの血をひく中国人女性。

伊島薫

1991年の11月にソ連で生まれて1ヶ月後の12月25日にロシアになりました。

伊島 まずはお名前を教えてください。

イリナ 今の名前は日本人の旦那と結婚してマミヤイリナ。本名は中国語でドンモンモン。漢字では董萌萌と書きます。

伊島 日本語読みするとモエモエだ。

イリナ そうです。お父さんがパンダを見て、シンシンとか可愛い系の名前でってことで適当につけて。それがパスポートに載ってる名前です。

伊島 やっぱりパンダから来てるんだ。日本で言うキラキラネームみたいな流行りの名前なのかな。

イリナ 流行りました。

伊島 苗字の董は日本語変換だと出てこないよね?

イリナ 出てこないですね。中国人ですけど母親の仕事関係で当時のレニングラード、今はロシアのサンクトペテルブルグに住んでいて、その時に私が生まれたんです。だから、お母さんが将来使いやすそうな名前というので、英語名をイリナと名づけました。

伊島 ソ連時代にロシアで生まれたんだ。

イリナ 1991年の11月はまだソ連でした。生まれて1ヶ月後の12月25日にロシアになりました。

伊島 そうなんだ。じゃあ、ギリギリソ連の時に生まれて。

イリナ それでいろいろなことが起こって、中国に帰るしかないってことで、私を連れて中国に帰りました。

伊島 そうなんだ。ソ連からロシアになることで混乱がいろいろあって、もう居られなくなって中国に帰ってきたんだね。中国のどこ?

イリナ 南京です。

伊島 元々はお父さんもお母さんも南京の人?

イリナ 南京の人です。

伊島 ソ連に行ってたってことは共産党系の仕事とかしてたの?

イリナ そうですね。お爺ちゃんがそっち系の人で。お母さんが電気系のエンジニアをやっていたので、90年代に国からそこに行けって言われて家族全員でロシアに行って、国のために仕事してたんです。

伊島 お父さんは?

イリナ なんにもしてないんです。お爺ちゃんが共産党の中央にいた人で、お父さんは金持ちの家に生まれ育って、金持ってるから仕事しなくてもいいよっていう人で、ずっと遊んでるんです。

伊島 お爺さんがお金持ちだったんだ。

イリナ 逆にお母さんの家はすごい貧乏だったんですけど、お母さんだけは大学を卒業してちゃんと仕事していて、お爺ちゃんが「うちの息子どう? 結婚したら良い仕事持ってきてあげるよ」みたいな感じでお父さんを勧めて、結婚しました。

昔、中国のトップは北京じゃなくて南京だったんですよ。

伊島 お父さんが共産党のけっこういい所の家系だから、結婚すればいい仕事につけると。

イリナ お母さんはいい仕事に就けるし、自分の家族にもちょっとお金が貰えるみたいなことで結婚したのかも。

伊島 ソ連で91年に生まれて、すぐにロシアになって南京に帰ってきたわけだ。

イリナ 昔、中国のトップは北京じゃなくて南京だったんですよ。戦争が起こって南京じゃなくて北京になりました。だから、昔の人はみんな南京語を喋っていました。

伊島 なるほど。京都と江戸みたいなものだね。

イリナ そうですね。北京と東北の人はけっこう喋りが強いんです。南京の人は上海に近くて、どちらかというと優しい喋り方なんです。

伊島 あっちの方は柔らかいんだ。だからか、中国の人が喋っているのを聞くと「この人たち喧嘩してるのかな?」 みたいな印象を受けたりするんだけど、それはやっぱり北京語なんだ。なんとなくやっぱり京都と江戸の違いに近いね。

イリナ 近いですね。昔の南京の人は、今のお爺ちゃんとお婆ちゃんもそういうプライドを持っていて、京都と同じような感じで「うちのほうが上品じゃない」って話しています。

伊島 中国にもそういう地域というか地元意識があるんだね。街並みもけっこう古いの?

イリナ まだ残ってる部分はあります。

伊島 昔の貴族というか王朝時代の人たちも残ってるの?

イリナ 残ってます。でも、みんなバレないように名前を変えて暮らしています。

伊島 そうだよね。そうじゃないと下手したら捕まって殺されちゃうってこともあるわけだよね。

イリナ あります。北京の方が多いと思います。

伊島 それは大変だね。今、共産党一党支配の政権下で、みんなどういう感じで生活してるのかな。

イリナ お爺ちゃんは共産党員だけど、私の叔母にあたる自分の二人の娘たちは日本に送ったんです。お父さんも送ろうとしたけど、男だからなのかビザが降りなかったんです。今の北朝鮮も似ていて、自分の子供たちをスイスで勉強させています。親の世代もこの国は大丈夫かなって思ってるんじゃないでしょうか。お母さんも「できれば外国の大学行ってほしい。世界は広いし、ここだけじゃないですよ」って考えでした。

伊島 それは全体的にそう思ってる人が多いということ?

イリナ 昔は少なかった。みんなそういう教育を受けていなかったから。歴史の本でも知ってる国は、日本、韓国、モンゴル、北朝鮮、世界はそこしかないみたいな感じでした。今はインターナショナルでネットも繋がってるし、いろいろ見れるから、若い人は違う感覚の人も多いと思います。

あれ? と思ったら、その子が一週間消えたんです。

伊島 ネットもいろいろ制限されてるって聞くけど。

イリナ LINE、Facebook、Twitter全部使えないです。

伊島 LINE、Facebook、Twitterが使えないだけで、他の情報に関しては繋がってるの?

イリナ あとYouTubeもInstagramも使えない。でも中国バージョンなら自分のInstagramとかLINEとかTwitter、YouTubeも作れます。みんなWeChat使ってます。LINEみたいな感じです。

伊島 ウェイボーっていうのもあったよね。

イリナ WeiboはTwitterみたいな感じです。

伊島 そういうのも全部監視されてるの?

イリナ されてます。高校2年の時に私と同じ中国のインターナショナルスクールの友だちが、Weiboで共産党の悪口を書いたんですよ。そしたらすぐに警察が来たんです。あれ? と思ったら、その子が一週間消えたんです。

伊島 え?

イリナ 一週間その子がいなくなったんです。一週間後に帰って来て、「どうなったの? どこ行ってた?」ってみんなが聞いても、なんにも言わない。ちょっと人が変わってるような感じで。

伊島 洗脳されちゃった?

イリナ わからないです。それがあってから、絶対ネットには一切書かないって思いました。しかも警察が来る時は、「宅配です」って言われて、ドアを開けたら警察なんです。

伊島 映画みたいだね。一週間どこかに連れて行かれて、帰ってきたら人が違ってるなんて。

イリナ 完全に別人です。なにがあったかはなんにも喋ってくれない。学校にはちゃんと来て課題もやってるけど、友だちとは一切喋らなくなって、そのまま卒業しました。

伊島 それはどこの国の人だったの?

イリナ 中国人で一番近い知り合いでした。

伊島 中国人で、でもインターナショナルスクールに入ってたのに。

イリナ うちのインターナショナルスクールはオーストラリア系で、学校の中ではフェイスブックも使えるんですけど、学校を一歩出たら中国のエリアだからダメなんです。

伊島 学校の中ではFacebook使えたんだ?

イリナ 使えます。外国人が多いからみんな使ってます。

伊島 学校でさえそうなんだから、町の中ではよっぽど取り締まりが厳しいんだろうね。

イリナ 厳しいと思います。何年か前、うちの旦那と一緒に上海に行った時、羽田で日本のポケットWi-Fiを借りたんです。そうしたら、普通に上海でもFacebookとかInstagram、LINE使えたんです。

伊島 日本の回線を通すとフィルターがかからないってことだね。

イリナ ですかね。

伊島 どうやってシャットアウトするんだろうね。

イリナ わからないです。しかも、ここでは使ないけど、ここでは使えるっていうのがある。

伊島 インターナショナルスクールでは使えて、そこを出たら使えないみたいにね。

イリナ そうなんです。

伊島 謎だけど凄い技術力だよね。ところで一般の人は中国共産党を支持してるの?

イリナ 小さい頃からそういう教育をされてますから。共産党は全部正しい、共産党がいないと今の生活はない。「ほら見て。なんでみんなそんなにお金持ってるの?共産党のおかげですよ」って。うちのお母さんからは、そういう教育を受けさせたくないからインターナショナルスクールに行けって言われました。あの頃は高校生だし反抗期だったから、みんな「どうなってるの?」とか「違うだろ!」とか文句を書いたらすぐ電話も繋がらなくなる。

伊島 逆にインターナショナルスクールに行ってたから、外国人との関わりもあって、中国共産党に反抗的な思想を持たれることを恐れて余計に監視が強かったのかもね。

イリナ そうかもしれないです。スパイになるかもしれないですしね。

伊島 中国はアメリカに次ぐ経済力を持つようになって来ていて、生活的にはみんな豊かになって来てるから、いつまでも今の政治体制は続かないんじゃないかって思うけど、とりあえず今は鉄壁だよね。

14、5歳の私は『ポップティーン』を見て、衝撃すぎて涙が出そうになった。

「なんで私と歳の近い女の子がこんなに可愛くできるの!?」って。

イリナ まるで80年代90年代のバブル時の日本ですね。今、日本でいっぱい家とか不動産を買ってたり、銀座とかの高い土地を持っているのはほとんどが中国人です。カナダやニューヨークの不動産も同じで、今お金を持っていて買い占めているのは全部中国人です。

伊島 逆に経済成長期だから共産党も安泰っていうことはあるかもね。みんな生活が苦しければ「この野郎!」ってなるんだろうけど、今のところ共産党の一党支配でも、自分たちは自分たちで楽しんでられるからいいや、っていうことなのかな。

イリナ みんなお金持ちになります。貧乏は許されない。

伊島 昔の日本と同じだね。僕が子供の頃も一億総中流時代とか言って、みんながなんとなくお金持ちみたいな時代があったんだよね。

イリナ きっと、近いものがあります。

伊島 そもそも、なぜ日本に来ようと思ったの?

イリナ 父方の叔母が日本に住んでいたので、中3の夏休みに「ディズニーランドもあるし、原宿もあるし、日本に遊びに来ない?」って誘われて。来てみたら「ここはなに!?」と思って。

伊島 ディズニーランドが?

イリナ 日本が。「ここはなに!? コンビニひとつとっても、ここにセブンがあって、ここにはファミリーマートがあって、なんて都会なの!」って感動したんです。山手線を見て「これ電車!?」って驚いた。南京は地下鉄しかないから、路面のは見たことがなくて。

伊島 いちいち大興奮したんだ。

イリナ はい。泊めてもらっていた叔母の家に歳の近いいとこがいて、いとこは日本で生まれ育って中国語もできないし英語もできない。あんまりコミュニケーションはとれなかったけれど、「雑誌読む?」って渡されたのが『ポップティーン』だったんです! 14、5歳の私は『ポップティーン』を見て、衝撃すぎて涙が出そうになった。「なんで私と歳の近い女の子がこんなに可愛くできるの!?」って。鏡で自分を見ると「なに? すっぴんで髪の毛ぼさぼさで、眉毛もぼさぼさだ!」って、ショックを受けました。

伊島 それで美容に興味を持ったんだ。

イリナ そうです。「うわっ、ここは天国だ! 日本は凄い!」って思って。それで、雑誌で見た原宿に遊びに行きたいと言って、いとこに連れて行ってもらいました。原宿に着いたらホントに涙が出そうになって。「ここは私のドリームタウンだ!」って確信したんです。旅行で来ていたから2週間で中国に戻って、ロシアにいるお母さんにすぐに国際電話をかけて「日本で生活したい! 日本でメイクとか、ビューティー系の仕事をしたい!」って言ったら、速攻で「ダメ!なに言ってるんですか。あなたは大学を出ないと許しませんよ」と。しばらく話をして、最終的には「大学に行ってから、自分の好きなこと探すならいいよ」と言われたので「じゃあ大学に行きます」って、お母さんの意見をまず受け入れました。

伊島 日本行きの了解を得るためだけに大学に行ったんだ。大学はどこに行ったの?

イリナ UCバークレーです。大学に行かないと許してもらえなかったので。そこからめっちゃ勉強して、お母さんが資料を送ってきた大学を片っ端から受験しました。結局、大学を卒業してからアメリカで仕事をしたけどあまり上手くいかなくて……。お母さんもそれを見て「あんた合ってないね」って納得してくれたようで、「もう大人だから自分で決めたいです。やっぱり私は日本に行きたい」ってあらためてお願いしたら、そこでやっと許可が降りました。 「やったー!」と大喜びで、日本に来て東京モード学園のヘアメイク科に入りました。

伊島 そこを卒業してからは?

イリナ 卒業してヘアメイクの会社でアシスタントしてる時、映画の現場で知り合った俳優さんに「今の仕事どう? 楽しいですか?」って聞かれて。「別に」って答えたら「あなた、まだ若いからちゃんと考えて。せっかく日本に来てるのに今のままでいいの?」と言われたんです。「そうですね……」と、言葉を詰まらせていると「私の知り合いですごい人がいますよ。会ってみますか?」って言われて、その方を介して5年前に小林さん(今、働いている美容室のオーナー)と出会いました。私その時初めて代官山に行ったんです。小林さんの美容室に連れて行ってもらって、外観を見た瞬間に「ここはなに!? すごくステキ!」って、衝撃を受けました。そしたら小林さんが「ここで働きませんか?」って言ってくれて「いいんですか!? ぜひやりたいです!」と、すぐに返事をしました。それで小林さんの美容室でアルバイトを始めました。

「天安門事件についてどう思う?」って聞かれて

「天安門事件ってなに?」っていう状態でした。

伊島 ご主人は何をしてる人なの?

イリナ 舞台の照明さんです。現場でナンパされて付き合いました。それで結婚して子供も出来て。

伊島 子供が生まれてからは、中国に連れて帰ったりはしたの?

イリナ 一度連れて帰りました。そしたらちょうどコロナが爆発して、12月末に帰る予定でニュースを見ていたら武漢でウイルスが発生したと言っていたのに、武漢は南京から遠いから大丈夫だと思ってチケットを取っていたんですけど、もう日本に帰れないかもしれないっていうタイミングで慌てて帰ってきました。

伊島 ギリギリ帰ってきたんだ。節目節目にそういう場所にいるね。ソ連が崩壊する時とか。

イリナ そうなんです。

伊島 2月くらいになってたら危なかったかもね。

イリナ そうですね。1月に入ったら、法律的に家から出ちゃダメになって。

伊島 南京でも?

イリナ 中国全体でです。あれはすごかった。街には誰もいなくて警察しか歩いてない。完全に規制があって、歩いていたらすぐ捕まっちゃう。怖いです。だからお母さんが中国に帰る前にちゃんと携帯の中も全部綺麗に消してから帰ってこいって。

伊島 大変だな。

イリナ 小さい頃のことはなにも覚えていないけど、大学生になってアメリカに行った時、友達に「天安門事件についてどう思う?」って聞かれて「天安門事件ってなに?」っていう状態でした。

伊島 なるほど。天安門事件のことを中国の人はなんにも知らされてないんだ。

イリナ そうなんです。「天安門には行ったことないし、天安門事件ってなに?」って聞き返しました。そしたらYouTubeを見せてくれて「え? そんなことがあったの? わからないです」と、困惑しました。

伊島 インターナショナルスクールに行っていてもわからなかったんだ。

イリナ それは先生たちも教えてくれなかったです。

伊島 アメリカに行って、中国人なのに同級生から「天安門事件どう思う?」って聞かれて「なにそれ」ってなっちゃうのってすごいね。

イリナ 考えられないですよね。

昔、映画とかドラマでアメリカの大学生がワーワーしてるの見て

「いいな、行きたいな」って思っていたのですが、

空港から出たら「なにこの田舎……」って、呆然としました。

伊島 日本に初めて来た時にすごいって思ったみたいに、バークレーの大学に行った時にはカルチャーショックはなかったの?

イリナ 昔、映画とかドラマでアメリカの大学生がワーワーしてるの見て「いいな、行きたいな」って思っていたのですが、空港から出たら「なにこの田舎……」って、呆然としました。サンフランシスコの空港は都会だけど、そこからバスに乗ってたら田んぼしかないじゃんって。スーパーに行きたいと思って、上の学年の子に「スーパー行きたいんですけど」って言ったら「車で40分かかるよ」って言われて「ここはアメリカですよね?」ってビックリして。しかも、免許がないから「あんた免許ないのにアメリカ来たの?」って言われて。カリフォルニアは免許を取れるのが16歳からだけど、私は外国人だから取れるかどうかもわからない。「しょうがない。連れてってあげるよ」って、渋々連れて行ってもらった先には、めっちゃ大きいショッピングセンターがあって、そこで買い物をしました。

伊島 そんなになにもない場所だったんだ。それでよく4年間いられたね。

イリナ 彼氏ができたので。意外とワイワイ大学生の生活していました。

伊島 謳歌してたんだ。付き合っていたのはどういう人なの?

イリナ いろんな人。1番長いのはアメリカ人とブラジル人で、ドイツの人と日本の人とは付き合ってはないけどデートは何回も行きました。慶応大学のエクスチェンジで来ていた人は面白かったです。英語の発音がすごいカタカナみたいで。あの方は印象的でした。あ、あと韓国人とも。

伊島 韓国人とも付き合ったんだ。

イリナ 何回かデートに行きました。一番長かったのがアメリカの男性で、次はブラジルの男性。面白いですよ。国籍とか関係なく「この人面白いな」って思ってデートとか行くんですけど、やっぱり国によって違うんだなって。

伊島 違うんだ。

イリナ ぜんぜん違います。日本の人ははじめて外でデートした時「あなたの分は自分で払って、俺の分は自分で払う」って。「あれ? デートじゃないの?」って。

伊島 他はみんな男が払ってたの?

イリナ そうですね。レディファーストだし。韓国人もちゃんとお金払ってくれて。

伊島 日本人でもお金払いそうだけどな。

イリナ たぶんあの人だけかも。まだ19歳だったから、お金持ってなかったんだと思います。

伊島 アメリカ人とブラジル人と韓国人と日本人の違いを教えてほしいな。

イリナ アメリカの人とは2年くらい付き合って、同じ大学で私より先に卒業したんです。ニューヨークの隣のニュージャージーの田舎の人で、帰って家の近くで仕事するって言ってて。「私はどうなるの?」「Skype使えば大丈夫だよ」って言ってたのに、帰ってからなんだか連絡が来なくなって不安に思ってたら、急にskypeが来て「あれ? 久しぶり」って出たら「I`m Cheating you.(俺もう浮気したよ)」って言われて。

伊島 Cheatingって浮気するって意味なんだ。

イリナ どういうことって聞いたら「じつは俺、高校の時から彼女いたんだよ」って。

伊島 ひどいヤツだな。

イリナ 毎日落ち込んで落ち込んでどうしようみたいな感じで。友だちが「大丈夫か?」って、自分の部屋に来てくれて、それでもすっぴんのままずっと泣いてたら、急にFacebookにメッセージが来て、学年で1番カッコいいブラジル人からのメッセージで「デート行かない?」って書いてあって。「は? ちょっと待って! ティッシュは!?メイクするから待って!行く行く!!」って、急に切り替わって(笑)。

伊島 それですぐに付き合ったの?

イリナ 見せつけて復讐してやると思ってすぐ付き合いました。面白かったです。

伊島 ブラジル人はどうだったの?

イリナ 南アメリカの人は情熱的で魅力的だから女の子が寄って来るんですよ。しかも、向こうの人はナイスバディの人が好きなんだけど、私は大学生の頃めっちゃ細くて、前も後ろも無かったけど、その人はアジアの女性に興味があるからって私と付き合ったんです。浮気ってわけではないんだろうけど、私のことは放っておいて、Facebookに他の女の子とクラブとか行ってる写真が上がってたり。

伊島 そうか。あなたにメッセージを送って来たみたいに、他の子にも送ってたんだ。

イリナ そうだと思います。

伊島 ラテン系だ。

イリナ そういう人です。でもそれを見てその国の人のイメージがあるなって思いました。

伊島 慶応の一件もあるから、それでが一概に日本人のイメージってことにはならないだろうけど、ブラジル人ってそうなんだなってね(笑)

イリナ そういうイメージがつきました。

伊島 韓国人はどうだったの?

イリナ 韓国人とはいい感じだったんですけど、急に軍隊に入りなさいっていう葉書が来て。大学2年で休学して、国に帰って軍隊に入ってしまいました。

伊島 韓国は徴兵制度があるからね。

イリナ その年齢になったら入ってくださいって。電話もアジアとアメリカだと遠いし、時差もあって。それでもう無理ですって。

伊島 その国なりの事情がいろいろあるんだね。

イリナ そうですね。いろんな国の人と付き合ってみると面白いです。誕生日に友だちから「あなたにプレゼント送るわ」って送って来たのが世界地図だったんですよ。「なんで世界地図なの?」って聞いたら「あなたが付き合った男性の国をこの地図にマークしたら」って言うんです。「いやいやいや」って(笑)。

 

顔が濃い人には似合うけれど、そういうメイクを自分にしたらちょっと違うんじゃないかなと。

それは私にとって魅力的じゃなくて。

伊島 面白いね。大学ではバイトはできなかったんでしょ?

イリナ 留学生は法律でバイトがダメです。学校の図書館でなにか配ったりして何ドルか貰えるんですけど、アルバイトは禁止されてました。留学生がアルバイトしてたらFBIとかCIAに睨まれるんです。中国のスパイなんじゃないかって。友だちに「ニューヨークに行ってみない?」って誘われてニューヨークの空港に着いたら、小さい部屋に連れて行かれて「どこから来たの?」「中国ですけど」「今なにしてるの?」「大学生です」「なんでニューヨークに来たの?」って、スパイみたいな扱いをされて。結局なにもないから解放されたんですけど。でも、ニューヨークは行ってよかったです。ニューヨークはアメリカだった! タイムズスクエアで「ここはアメリカだ〜!」って、大興奮しました。

伊島 もともとそういうアメリカを想像してたわけだからね。それでもニューヨークではなくて日本に行こうと思ったのはどうして?

イリナ 特殊メイクが好きで、アジア系のそういう学校を探してたんです。向こうの人は、日本人とか中国人の顔をアメリカ人のイメージに合わせたメイクをしてるんですけど、ちょっと違うんですよ、アメリカのメイクは。厚塗りというか、粉をすごくバァーっと塗ってからからアイシャドウとか乗せて。顔が濃い人には似合うけれど、そういうメイクを自分にしたらちょっと違うんじゃないかなと。それは私にとって魅力的じゃなくて。「よし決めた! やっぱり日本に行く」って、日本の専門学校を探しました。日本の方が合ってるし、アメリカに飽きたのもあったし、まだ若いし、他の所にも行ってみたいなって。それでアメリカで調べて東京モード学園のヘアメイク科に入りました。いろいろあったけど、あの頃は日本語ができなかったから、英語で調べて1番最初に出てきた東京モード学園しかないと思って入りました。

伊島 日本語は日本に来るまで喋れなかったんだ。

イリナ 喋れなかったです。「こんにちは」くらい。旅行で来てただけだから、注文する時はいつも「this」って言って指差していました。

留学とかじゃなくて、ヨーロッパで地元の人として生活してみたいなって。

伊島 このインタビューしていて面白いと思うのは、外国人でも白人とか黒人とかであきらかに日本人じゃないよねって見える人は、日本語が喋れる人でも街を歩いていると英語で話しかけられたり、アジア系だと逆に日本語がわからないのに当たり前のように日本語で話しかけられたり、そうかと思うと見た目は白人だったり黒人でも日本語しか喋れない人もいたりするところなんだよね。

イリナ 結構あります。モード学園の学生時代に先生のアシスタントをしていて、急に俳優さんから「お姉さん、出身はどこ?」って聞かれたときに「中国です」って言ったら「中国のどこ?」「南京です」「南京?」って、話が噛み合わないなと思っていたら、それは日本の中国だと思ったみたいで。

伊島 あぁ! 中国地方ね!

イリナ それです!

伊島 面白いね(笑)。将来は美容室をやりたいの? それともヘアメイクの仕事をやっていきたいの?

イリナ 最近考えてるのは、もうちょっと世界を見たいと思って。コロナが終わったら、外国に行きたいです。でもまだ子供が小さいから、もうちょっと子供が大きくなったらかな。もっと他のところも見てみたいし、ここで終わりじゃないと思っています。

伊島 今度行くとしたらどこ行きたいの?

イリナ ロンドンに行きたいです。留学とかじゃなくて、ヨーロッパで地元の人として生活してみたいなって。子供の頃からビートルズが好きで、ずっと行きたいなって思っていて。でもロンドンは毎日天気が悪くてそれは嫌だなって。サンフランシスコもそんな感じで雨が多くて。でも、ロンドンには行ってみたいと思っています。そこの美容室で働けるなら働いてみたいし、メイクで働けるならメイクもやってみたい。まだ終わりというか、ここで人生が決まるのは嫌です。カッコいい人生を送りたいんですよ。「なんで私、家で子育てしてるの?」って、たまに思います。これはもう体験したからもういいと。アフリカも行ってみたいですね。

伊島 バイタリティーがあっていいね。

イリナ 野望があります。

伊島 素晴らしい野望だね。そういえば気のせいかロシア人が混じってるような顔をしてるね。 肌がつるっとして透明感あるよね。

イリナ じつはお母さんの実のお父さんがロシア人なんです。

伊島 お母さんの実のお父さんってことはお爺ちゃん?

イリナ 私が知ってるお爺ちゃんは中国人なんですけど、実のお爺ちゃんはお母さんがまだ赤ちゃんの時に亡くなったんです。誰も口に出しては言わないんですけど、お母さんのお姉さんたち、つまり私の叔母さんたちはみんなハーフみたいな顔をしてるんですよ。

伊島 お母さんの方のお爺ちゃんがロシア人ってことか。

イリナ もう亡くなっていないですが。

伊島 だからお母さんはロシアに行かされたってことか。ロシア語ができるからって。

イリナ そうなのかもですね。

伊島 最後に質問があるんですけど、あなたがミックスジュースを作るとしたらなにを入れたいですか?

イリナ 果物だけですか?

伊島 なんでもいいです。野菜でも他の物でも。

イリナ なんでもいいんですか? じゃあ、ミントとトマト。ミントいっぱい入れて、トマト丸ごと一個入れて、上にちょっとレモン絞る。

伊島 わりとシンプルだね。

イリナ シンプルです。

伊島 水分少なくない?

イリナ トマト丸ごと一個入れてるから。

伊島 なにも液体は入れなくていい?

イリナ 入れるとしたら、お酒入れるかな。

伊島 カクテルか! お酒好きなんだ。

イリナ 好きです。今は飲んでないけど大学時代はほぼ毎日バーに行ってました。学校の先生に「あんた、ここに住んでるの?」って言われるほど、ほぼ毎日行っていました(笑)お酒じゃなかったらトニック入れます。ジントニックのトニック。

伊島 トニックウォーターね。ジンも入れていいよ。

イリナ じゃあジントニック入れます。

伊島 ちょっとブラッディ・メアリーに近いね。トマトだしね。

イリナ モヒート的な感じ。トマトが入っていて夏寄りだけど夏じゃない、6月のこういう天気みたいな感じのお酒です。

伊島 作るのが楽しみです。今日はありがとう。

イリナ こちらこそ、ありがとうございました。

【彼女が見せてくれたお母さんとお父さんの写真】

 

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