0021_21-11_27_満島ひかり Mitsusima Hikari

0021満島ひかり

その名のとおり光に満ち溢れた存在。光に包まれ、光を呼び込み、光に導かれて周囲を明るく照らし、彼女が現われたとたんにその場がパッと明るくなる。私の妻との仕事繋がりで始まったお付き合いなので「ひかりちゃん」と呼ばせてもらっているのだが、話せば話すほどどうしてこんなにも面白い人物が出来上がったのか、不思議でならない。そんな満島ひかりという人物の成り立ちを、少しでも知りたい、探りたいという気持ちもあり、ざっくばらんに話を聞いた。

伊島薫

伊島        ミックスマガジンは人種のミックスとか国籍のミックスとか、あとはジェンダーのミックスとかカルチャーのミックスとか、なんでもミックスにまつわる人たちのインタビューが中心のメディアなんです。で、ひかりちゃんもここに来てもらったということは、なにかしらのミックスなわけなんですが、まずはそこから話してもらえますか。

満島        はい。まずは血がミックスです。具体的にどういう血なのかはまだ調べているところなんですが、昔はずっと父のことをアメリカのハーフなのかなぁと思っていました。だけど20歳の時に一人でヨーロッパに遊びに行ったら、ヨーロッパの人のまつ毛の生え方が父に似ている気がして、ヨーロッパなのかな?と思ってきて。会ったことのない祖父は沖縄に駐在していた米軍さんで、父の母であるわたしの祖母は、沖縄のコザという街にある嘉手納基地の近くのゲート通りという通りに住んでいて。わたしが生まれる前まではストリップバーでお酒を出したり、お客さんの相手をする仕事をしていたみたい。ストリップはやっていないんですけどね。私が生まれた時に、おばあちゃんがストリップバーで働いてるのは可哀想だからって辞めて、兵隊さん相手のお土産物屋さんをしばらくやっていました。父は明らかに他の国の血が混じった顔つきなので、祖母は外国の人と子どもを作ったんだろうなとは分かるのですが、話を聞いたことはありません。息子である父親が昔「僕のパパは誰?」って聞いたら「忘れた」って言われたらしく(笑)それからなにも聞けなくなったって言っていました。その祖母が亡くなった時に父がタンスをどかしたら、額装された写真が出てきて。その裏に名前と住所が書いてあったので、その住所を元に、俳優をやっている弟・真之介と一緒にニューヨークに行きました。軍人さんなので情報がけっこう残っていて、探したらかつて住んでいた場所や今住んでいる場所なんかも出てきたんです。ちょうどわたしたちが行く半年前くらいに亡くなったこともわかりました。「あぁ、亡くなったから呼ばれたんだ。生きてるあいだは違ったんだね」って弟と語り合いました。父には、異母兄弟がいることもわかって「お父さん、弟いるよ!」ってすぐに電話して(笑)

伊島        うん、そうなんだ。

満島        一緒にニューヨークには行けなかったんですけどね。日本と海の向こうの国のミックスで生まれて、沖縄がまだ返還される前の子どもの頃は「アメリカ帰れ!」とか学校でも言われていた時代で、そんな父の抱えてきた気持ちはわたしたちには分からないですけど、電話口ですごく嬉しそうで。父の父親が、わたしたちの祖父が、本当に存在したんだってことを初めて思えた瞬間だったんです。祖父が昔暮らしていた地域に行って、近くのイタリア料理屋さんに入ってランチを食べながら、店員さんに「おじいさんの形跡を辿りにきたんです」って話をしたら「あなたたちみたいな子が何人か沖縄から来たことがあるよ」って言われて、「あっ、そうなんだぁ」と。

伊島        へえぇ。そうなんだ。

満島        祖父の名前を見て「多分アイルランド人の女の人とイタリア人の男の人のミックスだと思うよ」って言われたんです。「あ、そうなんだ、ジョー・ペシとかデニーロと一緒じゃん!やばーい!」みたいな感じで弟と盛り上がって(笑)そのあと、たまたまイタリアに行く機会があったので、イタリアの方にも名前を見せたら「その名前だったら、ナポリの鉄職人の家系の名前だよ」って言われたんです。

伊島        おおー。すごいことになってきた。

【祖父の形跡をたどりNYへ】

【バスケット部の顧問をしていた両親の影響で大好きな、NBAを観戦。弟の真之介と】

満島        そこまでが一応自分の血に、日本と海の向こうの国がミックスしているのがわかっているところです。わたしには弟妹が下に3人いるんですが、違う国の血を持った似ている人たちっていうか、少しずつ混じり方が違っていてそれが面白いです。見た目もそうだけど、思考やフィジカルなんかにも血の歴史?のようなものが組み込まれているように思えてならなくて。沖縄にいるとハーフやクウォーターはちょこちょこいるので普通なんですけど、東京の学校に通って、余計に血が混じってることを感じました。

伊島        うん。みんな混じってるんだよね、もともと。

満島        わたしたち沖縄で育ったんですけど、沖縄の血は一切入ってなくて。

伊島        お母さんは鹿児島の人なんだよね。

満島        母が鹿児島で、父方の祖母が奄美大島なんです。魂の絆の濃い沖縄の中で、うちなんちゅー(琉球人)だけどうちなんちゅーじゃない、不思議な存在で沖縄にいた感じです。

伊島        いやぁ、でも面白いね。アメリカ人は元々ヨーロッパのいろいろな国から来た人たちで成り立ってるわけだから、既にだいたいミックスされてるわけで、今度はそういう人が日本に来て、日本人と結婚して子どもができて、っていう話だよね。つまりイタリアとアイルランドのミックスのアメリカ人と奄美大島のミックスがお父さんで、そのお父さんと鹿児島のお母さんの間に生まれたのがひかりちゃんたちなわけだよね。ちょっと辿るだけで随分といろいろ出てくるね。

満島        他の国に行くと、真之介はスペインの人に見えるみたいなんです。すっごいスペイン語で話しかけられています。わたしはヨルダンに行った時に、ホテルのレセプションでジプシーの子どもだと思われて「ダメダメダメ、ここに来ちゃダメ!」ってシッシッとかされて(笑)「違う違う!わたし日本から来たんだよ、大人だよ」とか言って(笑)

伊島        えーー(笑)

満島        「あ、わたしこっちに見えるんだ」って発見もあって面白いです。

伊島        そうだね。一番下のコウタロウさん以外の3人には会ってるけど、みんな違うもんね。

満島        みんな違う。みなみ(妹)は肌が真っ白なんで、もしかしたらアイルランド系なのかもしれないですね。ほんの少し北欧に近くなるっていうか。

伊島        うん…。ひかりちゃんはジプシーか。そう言われてみれば(笑)

満島        ジプシーの子どもの顔みたいです。ヨルダンに宿泊して、シリアの難民キャンプに取材に行ったんですが、頭に被り物をすると現地の方とちょっと混じっちゃって(笑)。

伊島        シリアに行ったんだね。

満島        行きました。わたしたちが訪ねた1週間後にキャンプは閉鎖されたようで。同行していたスタッフの中に後藤さんという方がいたんですけど、その何ヶ月か後に、あのイスラム国に捕まったとニュースに出てたからびっくりしました。他のスタッフさんに聞いたら「亡くなったってニュースに出てたけど、10年くらいしないと本当のことはわからないよ」と。

伊島        そうか。映像が公開されてた方だよね?

満島        そうなんです。安全は守られていたし、場所は違うけど、びっくりしました。

伊島        すごいよねぇ。

手がないとは思えないくらい手がある人たちと同じくらい完全だから、

横にいてもまったく違和感を感じないんです。

満島        沖縄のころ、同級生に血のミックスも数人いたし、性のミックスもいっぱいいて、なかよし学級(ハンデを持つ子の学級)のみんなとも遊んでいたから、今、ジェンダーって言葉が行き交う感じとか、人それぞれの自然の流れに名前をつけて、カテゴライズしていくことをちょっと難しく感じます。

伊島        なるほど。

満島        カテゴライズして楽になる人も、話しやすい人も生まれていると思うから、否定するのは違うけど、本当は自然にしていられて名前にならなければいいのにって思っちゃいます。

伊島        そうなんだよね。僕が思うのは、例えばパラリンピックもオリンピックに対してあるじゃない。あとよく“障がい者アート”とか言ってね、障がい者が書いた絵だけを集めた展覧会とかあるんだけど、あれはよく意味が分からない。

満島        わかります、不思議ですよね。

伊島        障がい者ってわざわざ分ける必要あるの?って思うことがけっこうあるよね。

満島        母が10年ほど養護学校の教員をやっていたり、弟妹がハンデのある子どもの学童保育園で働いていたり、父も、ハンデを持っている大人の寮のお手伝いをしていたり。何がどうとかではなく、出会えば遊ぶし、もちろん生きる為にカラダやマナーのサポートが必要な方もいるけど、まとめて語るのは難しいですよね。ひとりひとりがそれぞれなので、一緒にすることはできないです。

伊島        うん。

満島        ドキュメンタリー番組でパラリンピックのアスリートたちに会いに行った時、やっぱりアスリートまで行くとちょっともう桁違いというか、完全に選ばれた人たちなんだなっていう感じすらしました。生まれたときから両手のないアーチェリー選手のマット・スタッツマンさんとか、両方の肩から下の手を持たない分わたしたちの何百倍も脚を使えるんですよ。ギリシャ神話の画とか、上野の彫刻とかでしか見たことのない脚の筋肉とか腱の形をしていて「人間ってこんなに脚使えるんだ」って驚きました。車の運転とかも脚でするし、手がないとは思えないくらい手がある人たちと同じくらい完全だから、横にいてもまったく違和感を感じないんです。でもよくよく考えると「あ、脚でハンドル切ってる!」みたいな。あそこまで行っちゃうと、もうずいぶん先を行ってる人な感じがしちゃう。

伊島        水泳とか観ててもね、腕がなくても脚だけでビャーッって泳いじゃう人とか、陸上だとステンレスの脚を付けてビヨーンて跳んだり、よっぽどあれがない人たちより強いじゃんてね。

満島        そうなんですよ!しかも義手義足とかは、メカを動かす能力っていうのも必要で。両手両足を持たない車いすフェンシング選手の、ベアトリーチェ・ヴィオさんっていう美しい選手にも会ったんですけど、その子は9歳ごろに重い髄膜炎で身体中が熱くなって、手足が焼け落ちるような感覚だったらしく、生きる為の選択で両手足を切断しています。「切って切って〜」ってけっこう明るく言って、ご両親もびっくりしたみたいです。会って話していてもものすごいエネルギーを持ったべべちゃんで、顔にもやけどの痕が残ってるんですけど、彼女は、肘のちょっとした筋肉の動きの塩梅で義手の指を動かすんです。もう本当にすごいんですよ。人間であって、アスリートであって、操縦士。質問をして返ってくる言葉もキッレキレで「エネルギー強っ!」っていう感じ。べべちゃんは火の精霊みたいに生まれてきたんだな。火が強すぎて、自分の体を焼き落として、それでもまだエネルギーが燃えてるんだっていう感じがしました。

伊島        へえ〜、すごいね。

満島        リオで活躍した選手たちにも何人か会ったんですけど、本当に精神的にも素晴らしいし、選ばれているんだなとしか感じなかったんです。この人たちのところに “god bless”が、天からの恵みがたくさん降りてきてるって。事故で車椅子になって、視線が変わったから「男の人のタイプが変わりました」って笑う妹の友達もいて。

伊島        それはすごいね。そうなんだ。

満島        背が高い子だから、以前は自分より背が高い男の人じゃないと嫌だって思っていたけど、背が関係なくなったからタイプが変わりましたって(笑)

伊島        いいなあ〜、明るくて。

満島        みんなそれぞれの人生を、もらったカラダで面白がれることとか、いつだって生まれ変われることを見せてくれていますよね。かなりかっこいいです。彼らや彼女たちは、機械と肉体のミックスなんですよね。

伊島        たしかに。

目は自然とか美しくて柔らかく光るもの、

思考は見える世界より見えない世界や物語の中に惹かれるみたいなんです。

満島        ちょっとミックスされてるのって、視野も広がるし思考も広がって、わたしはけっこう好きだなって思っています。

伊島        ホントに僕もそう思う。沖縄には国籍のミックスだけじゃなくって、ジェンダーのミックスもいっぱいいたって話だけど…

満島        いましたね。どうしてだろう?暑いからかなぁ。小学校の頃、男の子で女の子の服をカワイイって言う子とおそろいを着たり、男の子のことを「あの人カッコいい〜」って恋してる男の子がいたり。ある時は「知念里奈ちゃんのPVそっくりに撮りたいからひかり手伝って〜」と男の子に屋上で、けっこう細かくビデオを撮らされたこともありました(笑)。さっきもお話した、なかよし学級っていうクラスの子とか、部活の練習で走っていたら、急に反対側から全裸で走ってわたしたちを追っかけて来るから、「お前もう中学生なんだから全裸はきついだろ〜!」とか、「そんなにカラダに自信あるわけ〜?」ってツッコミながら逃げたり(笑)。どちらかと言うと、笑いながら屈託なくイジってたかな。

伊島        いいね、そういうの。変人扱いするんじゃなくて、ストレートにイジるっていうのがね(笑)

満島        なかよし学級じゃなくても変な子はいっぱいいて。普通の学級の子だけど、給食の時間になると廊下にたくさんの机を並べて、ずっとハードルみたいに飛んでる子とか。その子は裸足で学校に来て裸足で帰っていたし、いろんな人がいたんですよ。わたしも変な人のひとりだったと思います。

伊島        いい学校だね(笑)

満島        それが当たり前でした(笑)ヤンキーも多くてまだまだリーゼントもいたし。エネルギーはあったけど、ある種お金のない地域だったのかな。それが逆によかったのかもしれないですね。団地もいっぱいあって、若くで子どもを産んだヤンキーカップルの子どもとかもいましたし、束縛されるようなことが起きると、みんなすごい反発してましたね。先生も友達も全員下の名前で呼び合って仲がよかったし。中学校で東京に転校した時には「満島さん」って呼ばれるのが妙に気持ち悪くて。女の子はみんな鼻にかかった上ずった声で喋るから「ワォ、全員ぶりっ子?」って思ってました。学校の先生も定時で帰るし「なにここ?会社みたい!」って。カルチャーショックでしたね、東京は。

伊島        なるほどねー。そういう環境が今の満島ひかりを産んだわけだね。

満島        子どもの頃に感じたことって、覚えているものですね(笑)。10歳の頃、沖縄アクターズスクールにオーディションで入って、1年半後には、“Folder”という音楽グループでデビューしました。『ポンキッキーズ』っていうTV番組が東京での初仕事で。“スチャダラパー”のBOSEさんと鈴木蘭々さんが司会で、ガチャピンとムックに、米米CLUBやピエール瀧さん、ともさかりえさんたちかがいるところにわたしたちもいて。初めは遊んでるみたいで面白かった。

【沖縄アクターズスクールの7人で結成されたダンスボーカルグループ「Folder」左上がひかり】

 

伊島        元々10歳でダンスとか歌とか、芸能の仕事がしたいというのがあったの?

満島        いえ、全然なかったですね。友達が「オーディションに行こう」って言うから付いて行ったら受かったパターンで。今思うと、何か予感がしていたのかもしれないですね。父によると、祖母が音楽番組が好きだったみたいで、「おばあちゃんがそんなにテレビ見て楽しい顔をするんだったら、ひかりがテレビの中に入ってあげるよ」って言っていたらしいです。その、アクターズスクールのオーディションでグランプリを貰った時に「将来の夢はなんですか?」ってインタビューされて「女優さん」って無意識に答えて、母に「ひかり、女優さんになりたかったの?」って驚かれたりもしました。本をたくさん読む子どもだったので、何となく新聞記者にでもなるかなと思ってたけど。

伊島        子どもの頃からそんなに本を読んでたんだ。

満島        1日に2、3冊は読んでたと思います。本を読みながら目を離さずに、学校から家に帰ったりしてました。二宮金次郎みたいな感じ?(笑)

伊島        えぇ〜〜〜。それで、壁にぶつかったりとかしないわけ?

満島        しないです。体幹とか空間の把握の訓練にもなっていたので(笑)。不思議なんですけど、小さい頃から耳は現実が好きで、環境音とか風の音とかを聴くのが好きで、目は自然とか美しくて柔らかく光るもの、思考は見える世界より見えない世界や物語の中に惹かれるみたいなんです。

伊島        だとすると、もし目が見えなくなったとしても、頭の中でいろんな世界を作っちゃいそうだね。

満島        お芝居の撮影中も疲れた時とか楽屋の電気を全部消して、5分でも目を閉じて、頭の中で海とか波の音とか星空とかを思い浮かべるんです。子どもの頃眼に映った景色たちって目のうしろに焼き付いているんでしょうね。瞬時にそこに行けるんです。音もそう。それでメディテーションというかリラックスして。そういうことを自然にやってます。

伊島        自分の見たいろんなイメージとか本で読んだイメージなんかを脳内にきちんとファイリングしていて、必要に応じてパパッと引き出す能力がすごいんだろうね。

満島        宇宙を感じるものがすごく好きで、宇宙の数式というか、感受性の内にも外にも美しい数式がいっぱいあって。こことここを組み合わせたらグッとくるってポイントとか、年々広く深くなっていくから、その数式の組み合わせも無限になっていって。誰とどこで何をするかで色んなカタチになってまた変わってまた変わって、何かと一緒に物作りする素晴らしさを年々味わってる気がします。

伊島        そういう意味では、役者っていう仕事はぴったりだったかもね。

満島        ぴったりだったのかもしれないですね。今だに役者たるやなんなんだ?と思うんですけど、たぶん合っているんだと思います。

伊島        役者って、いろんな人の人生とか性格とかを与えられるじゃない。そういうのをいちいち「自分とは違う」って思っていたらできないし、違っていても逆に「これあったかもしれない」っていう引き出しがいっぱいあればね。

なぜか成功しようとしたがらない。

そのくせ、分からないところを分かってほしいってところもあって、面倒臭いやつだなって思います(笑)

満島        どんな波にも乗れちゃえばグー、って感じです(笑)。乗れるカラダを鍛えるのがポイントで、読解とか理解とか、楽しむとか手放すとか、受け止めるのもちょっとだけ我慢するとかも。役柄とか、場所やスタッフさんによって臨機応変に変えていくんだと思うんですけど、同じカタチは毎日ないので、それこそミックスの面白さですよね。目の前にいる人と、その時の光で、瞬間に反応していくことにすごく魅力を感じていて。繊細で大胆に、いろんなリズムに反応するには日常の生活が本当に欠かせないって思っています。“ありがとう”って言葉一つにしても、聞こえる“ありがとう”が経験でも、熱さでもぜんぜん違ってくるのも面白いところですね。視野が狭くてだからこそ強くて良いこともあるし、視野が広くなって決められなくなった優しさや豊かさもあるから、どっちが良いとかはないんですけど、その時その瞬間に反応していたいなって……とか語っといて何ですが、「わたしって意外にテキトーな人間だな」って思うこともいっぱいあるんですよ(笑)

伊島        自分でそう思うんだね。

満島        思います。たとえば「AとBがあったら、絶対こっちを選ぶでしょ」って場面でもなぜか違う方を選ぼうとする。脳みそは「いや、そっちの方がいいよー」って言ってるんだけど、なぜか「こっちをやりまーす」って言っちゃってて「どうしてこんなことするんだろう」って思うんですけど「ま、そうなんだろうな」と(笑)

伊島        へえーー。

満島        なぜか成功しようとしたがらない。そのくせ、分からないところを分かってほしいってところもあって、面倒臭いやつだなって思います(笑)

伊島        でも、成功しない方を選んでるようで、逆にそれが成功してる感じもするねぇ。

満島        事務所に所属している時は、社長さんがイメージを守ってくれていたので、わたしともう一人のフィルターを通すことで、みんなにとって多少分かりやすくなっていたと思うんです。でも一人になると、もう深く分からなくなるので、ある意味で良しとする幅が広がちゃってますね。「この台本の面白さがホントに分からないからやってみたい」とか、でもこの面白いのか分からないものを、面白いと思って書いた人がいて、面白いと思って撮ろうとしてる人がいるわけで「それってどういうことなんだろう、知らない何かがあるのかもしれない」っていうことに惹かれたり(笑)だけどやっぱりやってるうちに「あれれ、これでいいのかなあ、積み重なったことをゼロにしちゃうんじゃないか?でも妙に気楽だなあ」とか「とっても下手くそに感じるな、でもちょっといいのかも?んー、もしわたしがこれで魅力的に見えてるんだとしたら、こういうのもまたアリなんだろうな」っていう方を見たがってる自分がいる。

伊島        相当変わってるね。アッハッハ(笑)

満島        相当変わってますよね。どうしようと思ってます。だけど、頭や経験では分からない何かに惹かれた時って、新たな扉を開くこともあるんです。

すごく好きだと思えている人たちと出会えていて、

この人たちともう会えないの?って思うとドキドキしちゃう。

【13歳で上京した東京の中学で出会った親友たち】

伊島        それはそうと、このあいだ“死体シリーズ”のモデルを頼んだら、死体はやりたくないって断られたじゃない。今までにもやりたくないって断った人はもちろんいるし、やっぱり人によって“死”っていうことに対しての考え方が違うと思うから当然なんだけど、ひかりちゃんがそう思った理由を教えてもらえるかな。そこにもひかりちゃんの持ってるなにかが隠されてると思うから、それをこの機会にぜひ聞いておきたいなって思うんだけど。

満島        死んでても生きててもどっちでもいいんですよね、わたし。死んだ人の方が好きな人も多いし。でも、今もし死んじゃったら好きな人たちにもう同じ姿では会えなくなることが一番悲しくて、そういうことを写真で表すのは難しいなって。

伊島        同じ姿では会えない?

満島        満島ひかりとして、伊島薫さんにはもう一生会えないじゃないですか。もしかしたら生まれ変わって違う姿で会えるかもしれないけれど、満島ひかりとして好きな人たちに出会って生きてることがすごく好きなんですよ。

伊島        いいね、満島ひかりで生きてることがすごく好きって。

満島        嘘つきじゃない自分がたまらなく好きで。ナルシストではないんですよ、昔から鏡の中の自分を見て自分だと思えたことがないような人なので。分からないんです、あんまり、自分が。たまに幽体離脱みたいな感覚で、言葉と声だけが動いていて、感覚が上にいる感じがして。だけど、ほんとに勝手で苦労するやつだけど、けっこうコイツいいな、みたいな感じで自分のことを気に入っていて。それから、生きている中で出会えた人たちが大好きで、そこにわたしの死のポイントがあるんです。自分の身体が滅びるとか誰かの肉体がなくなるってことではなくて、みんなの肉体と魂をセットで好きなんです。わたしも、わたしの身体つきで、声で、わたしの魂だから自分が面白いなと思っている。それは伊島さんにも感じるし、伊島さんの魂で別の肉体だったら、また違う感情を持つだろうなと。だから今、すごく好きだと思えている人たちと出会えていて、この人たちともう会えないの?って思うとちょっとドキドキしちゃうんです。

伊島        なるほど。

満島        死ぬってことを連想するとそっちに気持ちが行っちゃって、死体になった姿を簡単に思い描けなかったんです。

伊島        そうだったんだね。

宇宙と自然の色が好きで、

そういうのを見ると呼吸が落ち着いて、ロマンチック状態なんです。

満島        家の中がわたし、宇宙色なんですよ。宇宙と自然の色が好きで、そういうのを見ると呼吸が落ち着いて、ある種のロマンチック状態なんです。そこに、変な意味でなく、エロティシズムを混ぜた感じの色合い(笑)。全然関係ないんですけど、数年前に大体の会話の全部が下ネタに聞こえて大変な時期もありました(笑)

伊島        ははは(笑)それは聞いてみたいね。ひかりちゃんの脳内に入ってみたいな。

満島        脳内に入られちゃホントにまずいと思います。実はいちど、ヒプノセラピーっていうのをやってみたんですけど、前世療法みたいな感じで催眠術みたいなのをかけられて、絶対嘘だよと思ってたのに、めちゃくちゃかかっちゃって、ビックリするくらいかかりやすくて(笑)その術師の人は喋らないでわたしが全部喋るんですよ、見えることを。

伊島        へえー。

満島        最初から宇宙にトリップしちゃって、魂だけになっちゃったんです。暗い中をずっと浮遊していて「どこですか?」って聞かれたら、「愛と平和の星から来ました」とか言って(笑)本当かよ!とか思いながら。ずっとぐるぐるぐるぐるして「ああわたし、愛と平和の星の魂なんだー」とか思って。

伊島        それは、自分で喋ってるのわかるの?

満島        分かります。分かるんだけど、身体が止められないんですよ、動いちゃって。見えることをとにかく喋って、その催眠術師が手をパンパンパンて叩くと、違う魂の記憶になって、イタリアだかスペインだかの結構いいお家の執事長の男の人で、シルクのクリーム色のタイをしてうっすら黄色のセットアップのスーツ着て、銀食器をキレーに磨いているんです。ああ、わたしの掃除好きとか整理整頓好きはこの魂から来てるの?なんて。その後もいろいろとすごかったです(笑)。

伊島        へえー(笑)

最初はわたしがヤバい人って思われていたのに、

どんどん周りがヤバイ人になっていくんです(笑)

 

伊島        このミックスマガジンをやってるってこともあって、このあいだ日本人のルーツってどうなってるのかなって本を読んでたのね。それで氷河期に陸続きだった国はみんな歩いて移動してるけど、日本とか台湾は島じゃない?だからどっち側から回ってきてるかでぜんぜん人種が違うんだよね。

満島        あ!丁度、国立科学博物館の“ホモサピエンス館”を監修していた、3万年前の日本人のルーツを調べて、台湾沖縄ルートを古代のまんまの船で渡る研究している方とよく仕事していて。

伊島        あ、実際に筏を作って、それで何回も失敗してる人(笑)

満島        そうそう!人類学者の海部陽介さんです。NHKの“SWITCHインタビュー”という番組でご一緒して、そのあとも交流があります。本も読んだけど、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人のハーフがいるとか、めちゃめちゃ面白いんですよ(笑)

伊島        そうなんだよね。

満島        人間ならざるもののハーフもいて、その末裔たちもいるって、すごい話だなと思うんです。猿から人間になったわけじゃないんですよね。

伊島        そうなんだよね。だからそういうのを読んでるとさ、何百万年とか、それぐらい時間が経たないとそんなに変わらないし、逆にぼくたちが生きてる何十年とかさ、歴史もせいぜい何百年とかを学んだところで、全体で見たらホントにもう小さい話だよね。

満島        チョンて“点”ですよね。ガッカリなことが起こった時にはその感性に「ピュッ」となります。 “今”なんて小さいし「どうせみんな死ぬんだから、一部!」と思って(笑)

伊島        大したことないしってね(笑)

満島        大したことないし、こんなことで悩んでなんじゃらほいって(笑)今、世界中すべての人が敵になったとしても、大したことないって感じです(笑)

伊島        まったくそうだと思うよ。そんなまったく大したことのない一瞬の出来事だけど、うちの町内の水掛祭りに来てくれたことがあったよね。

満島        あれは、大したことのあるお祭りでした(笑)。祭りの最中に、70代のお兄さんに「いま家に誰もいないから、どう?」って声かけられたりもして(笑)もちろん行きませんでしたけど、祭りのエネルギーって生き生きして、好きです。

伊島        ええっ〜、そんなことがあったの〜?困った親父だなぁ(笑)

【目黒油面地蔵通商店街の水掛祭りに参加してくれた時の貴重な一枚】

満島        いろんな種類がいて、何でも起こり得るんですよね!ちょっと違うかもしれないですけど、大好きなしりとりの絵本で、クマが蓄音機を聞いてるページがあって、「クマって蓄音機で音楽を聴いていいんだ」って思って4、5歳の時に「ハッ」としちゃって。

伊島        はははは(笑)

満島        その絵本、鬼の親子がピンポーンって鳴らすんですけど、「え、鬼の親子ってピンポンしていいんだ!」って(笑)裏側をツンツンされたのがたまらなかったです。ホントはみんな自由だけどみんなで生きていくためにみんなで守り合ってる。だけどやっぱり積もっちゃう違和感を、本が解いてくれたんでしょうね。小学校の高学年になって、江戸川乱歩の明智小五郎が好きだったのも「この人、犯人より性格悪いけどそれでいいんだ!なんだこれ」って(笑)そしてハタチくらいになって読み返すと、江戸川乱歩さんの書く文章がたまにすごい散らかってて「わざとなの?このおじさん迷ってる〜」なんて愛しく思ってました(笑)

伊島        へえ〜(笑)すごい子どもだな(笑)

満島        わたしもそうなんですけど、みんなどこかしら変な部分を持っていて、誰かのそういう部分に触れると「わあ〜キミもタダ者じゃないじゃ〜ん」みたいな感じでグンと仲良くなります(笑)「わあ!この人やっばい!」と思った瞬間に親しみが湧く(笑)あるひとつのところで突出してる人はかなり好きかもしれないです。

伊島        いいねえ〜!人生楽しそうで(笑)いろいろ悩んだりしてるのかなって思ってたけど、まったく逆だね。全部いい方に取り込んじゃうっていうのが。

満島        面白がって実はふざけてるのが一番楽しいかな。辛い辛いって言っててどうするんだって。たまには言うけど、やっぱり笑う門には福来たるです。

伊島        ひかりちゃんの元気の秘密が分かった気がします(笑)

満島        最初はわたしが変な人って思われていたのに、どんどん周りが変な人になっていくんです、隠せなくなる(笑)。メイクさんも最初は普通だったのに、最近はもうファンデーション塗る時に、楽譜が見えるみたいで、♪テン・テテン・テテテテテン♪って塗るようになっちゃって(笑)ヘアーさんも最後に「フッ」って息かける人がいて、ベテランさんなんですけど「これ、息かけるのとかけないので変わるのよ!」って言って、ホントに違うんですよ、なにかが(笑)みんな自分なりの魔法を使えるようになっていて、見ていて面白いなって思います。

伊島        へえ〜、素晴らしい! あ、お迎えが来てるみたいだから、そろそろ終わらないとね。

満島        はい、そろそろ。

伊島        今日はありがとうございました。

満島        こちらこそ、ありがとうございました。

 

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