0009_20_09_11 津田珠蘭 Tsuda Julan

0009津田珠蘭

息子から「ミックスの友達がいるよ」と教えられてインタビューをお願いした。ボクと同様に写真も撮れば映像も撮る。その上雑誌まで作ろうとしているというから驚いた。話を聞くとその感性はとても自然体。自分に逆らわず、自分の内から湧いてくる衝動に身を任せて作品を作り続ける20代半ばの将来が楽しみな映像作家。

伊島薫

伊島        まずは、お名前からお願いします。

珠蘭        津田珠蘭(つだじゅらん)です。これは仕事する時だけの名前で、本名は津田諄です。

伊島        生年月日は?

珠蘭        1995年生まれの11月5日です。

伊島        どこで生まれてどこで育ちましたか?

珠蘭        生まれ自体は東京の狛江で、生まれてすぐ神奈川県の川崎市に引っ越してそこでずっと育ちました。

伊島        そうすると、生まれてから今までずっと日本で?

珠蘭        日本出たことないです(笑)こんな顔で。

伊島        出たことないの(笑)なるほど。国籍も当然日本なわけだよね。

珠蘭        そうですね。

伊島        ご両親は?

珠蘭        両親も日本人ですけど、母方がそれこそすごいミックスの仕方をしていて、僕自身もまだ把握できてないくらい。母のひいおじいさんがドイツと日本のハーフで、その奥さんが台湾人です。そこからの枝分かれなので。しかもそのドイツと日本のハーフの男の人、

伊島        ひいおじいちゃんね。

珠蘭        はい。ものすごくプレイボーイだったみたいで、いろんな世帯を設けていたみたいです(笑)

伊島        あぁ、なるほど。

珠蘭        その後も離婚していたみたいで、なんか、よくわからない感じになっていて。母方の家計はみんな色白で、海外の血が混じっているような顔がいっぱいいて。ただ父方はもうずっと日本です。

伊島        ふーん…。てことは、もう珠蘭くんは、クウォーターというよりかは…

珠蘭        ちゃんと調べたら、16分の1みたいです。ワンシックスティーンスって言うみたいです。

伊島        なるほどね。

珠蘭        ほとんど感じてはいないですね。

 

伊島        なるほどなるほど。今あなたは何をやっている人ですか?

珠蘭        今は、メインとしては映画を中心に映像を作っていて、それとはまた別の活動で写真も。その二つをメインに、ある時は映像の監督をしたり、ある時は写真家で、その二つでやりくりしていこうかなという感じです。

伊島        なるほど。聞くところによると雑誌も作っているの?

珠蘭        今作っています、まさに。

伊島        ちょうど制作中?ミックスマガジンと一緒だ。

珠蘭        そうですね。

伊島        「オッドマガジン」。これはどういう雑誌なんですか?

珠蘭        これは、半年に一回くらい作ろうかなと思っていて、写真が撮れるので。最初はまだ手探りではあるんですけど、僕自身が興味が湧いた俳優だったり女優だったりアーティストだったりを、写真込みで特集したり。あとは土地土地に根付く風習とかを別セクションで特集したり。あとはホントに定期的に出す自分の写真集という位置付けで。その「オッド」っていうのがちょっとマイナスの意味があるんですよ。「odd men」みたいに「変人」とか「変な男」みたいな。

伊島        「変な雑誌」ってことだね。

Odd MagazineVol.1 “The Journey Begins”

珠蘭        ミックスマガジンとちょっとかぶるんですけど(笑)、「変な」ってニュアンスの意味をポジティブに捉えたもの。そういう人たち、そういう土地、そういう文化っていうのを、取り上げて行こうかなと。

伊島        今まで作った作品は大体自主制作なの?それともちゃんとしたプロダクションがついてる?

珠蘭        そうですね、自主で撮って、ちょいちょい他の仕事も入っているって感じですね。

伊島        「ボーダー」っていう短編作品っていうのが、映画ってことですよね?

珠蘭        そうですね。ミュージックビデオとかになると請負いでやったりとか。

伊島        「サワ」っていうのは人の名前?

珠蘭        そうです。アーティストの名前です。「トランスポゾン」というのが、友人の監督と一緒に作ったやつで、これがゴリゴリにアーティスティックな感じの映像で、1週間くらい青山のスパイラルで展示上映をしたんです。

伊島        ふーん…なるほど。

珠蘭        あとはほとんど、クライアントワークですね。

伊島        今、何歳なんだっけ?

珠蘭        今年25です。

伊島        そうすると、高校を卒業してからすぐにこの仕事に入ったわけだ。

珠蘭        そもそも高校2年生の中頃にこの業界に入ったんです。最初は俳優として入って、そこからしばらく俳優をやって、19か20くらいで監督やりたいなと思って、そのタイミングで映像の専門学校に行ったりとかしつつ、徐々に作る方に廻っていきました。

伊島        じゃあホントに自分でなんかやり始めるところからスタートして?

珠蘭        本当に最初は手探りでした。

伊島        役者も結構やってたの?

珠蘭        そうですね…。

伊島        それはやりたくてやっていたの?それともスカウトされたとか?

珠蘭        それが、それまでの人生で一瞬たりともやりたいと思ったことがなくて。僕の母方のおばあちゃんが女優なんですよ。「月光仮面」とか出ていたんです。

伊島        月光仮面!オレが子供の頃観てたやつだ!(笑)

珠蘭        それのお姫様役で馬に乗ったりしていました(笑)僕が生まれてからは舞台ばっかりやっていて、幼稚園の頃とか、その稽古場に見学に行ったりとかしていたんですよ。絶対自分には合わないなってずっと思っていたんですけど…元々サッカー少年だったので、将来そっちに行くかなと思っていたんですけど、怪我して辞めて、1年くらい何もやらず、空白の時間があって。どうしようかなこれからって思っていた時に、歯医者に行ったんですよ。その歯医者の院長の奥さんも先生なんですけど、その人から「歯並びもいいし、顔もいいから、役者とかやってみたら?」って。

伊島        はっはっはっは(笑)

珠蘭        絶対いやです!って最初は断っていたんですけど、その人が「じゃあ私がジャニーズに勝手に送るから」って言って。でもその時はあんまりジャニーズとか向いてないと思っていたのか、「それはやめてください、じゃあ自分で送ります」って言って、何社か事務所に履歴書を送って。その歯医者に行ってなかったら踏み込んでいなかったですね。

伊島        ジャニーズじゃなくって、別の何社かの事務所に送ったの?

珠蘭        そうです。それで1社引っかかって、養成所に1年間くらい行って、所属という形になって色々やっていました。で、一回やめて別の事務所に行ったりもしていました。ドラマとかが多かったです。

伊島        で、そこから作る方にだんだん廻るようになったわけで、監督なり制作する側の仕事をするってことを最初は考えていなかったんだ。

珠蘭        そうですね。サッカーやっていた時はサッカーの監督をやりたくて。なんか通ずるものがあるのかなって(笑)

伊島        まあ、同じ監督だしな。はっはっは(笑)

珠蘭        自分でクリエイトしたいのかなって。

伊島        なるほどね、一プレイヤーじゃなくてね。

珠蘭        動かされるより動かしたかったのかな。

伊島        「ボスザル」タイプってことね?

珠蘭        優しいボスザルタイプですね。

伊島        あっはっはっはっは(笑)なるほど。

伊島        人によってミックスっていうのは、ポジティブな捉え方をする人とネガティブな捉え方をする人と両方いると思うんだけど、あなたはどんな感じ?

珠蘭        僕はドポジディブですね。僕自身が仕事も血もそういう感じなんで。

伊島        それは子供の頃から意識していたの?自分がミックスだっていうことは。

珠蘭        やっぱり周りにいる友達とか、明らかに小さい頃は本当に肌が白くて、誰よりも肌が白かったんですよ。小学校の頃は女の子より白かったです。それにどんどん顔が濃くなって行く自分を鏡越しに見ていて。はじめて先祖にそういう人がいるって知ったのは小学校1、2年の頃でしたね。

伊島        そのひいおじいさんのことね。

珠蘭        写真を見せられたんですよ。自分ではそれが当たり前だと思っていたけれど、確実に他の子たちとは違うなっていうのは、薄々感づいてはいました。初めて会う人に「ハーフですか?」とか「クウォーターですか?」とかよく聞かれるようになったのは、高校生に入ってからですね。

伊島        小さい頃はあんまり言われることはなかったんだ。

珠蘭        そんなになかったですね。もしくは言うまでもないのか。中学・高校に上がると思春期にもなるし、みんな気になるのかな?

伊島        いろんな人がいるけど、顕著に違う人もいるわけじゃないですか。あなたの場合は16分の1だから、かなり分かりづらくなっているかもしれないけれど。ホントに「ハーフ」だと極端なことを言うとほぼ外人にしか見えないとかね。白人・黒人にしか見えない人とかいるわけじゃない。そういう人だと小さい頃からイジメられたりとか嫌な思いをしたりした人も多いと思うんだけど、そういうのってどう思いますか?

珠蘭        僕自身はそういう場に立ち会ったことがあまりないです。逆に僕は小さい時からサッカーをずっとやっていたので、海外の選手とか、憧れの対象でしかなくて。だから外国の人っていうのは本当に憧れの対象で、それもあって逆に喋りに行きたいと思っていて、そういう友達も多かったです。でも、その友達がそういう目に遭っているのは見たことがないです。

伊島        ハーフとか外国人の友達もいたんだ。それは高校の時?

珠蘭        小学校の時に知り合ったり、中学だったり。

伊島        今は大体50人に1人くらいが、日本人と外国人の間に生まれる人らしくて、そうするとクラスに1人くらいはいる計算になるんだよね。

珠蘭        そうですね、それこそ今仲が良い子は小学校の同級生です。

伊島        そういう子がイジメられているっていうのはなかったんだ。

珠蘭        ありました、僕イジメられていましたもん(笑)

伊島        ああ、やっぱりそうなんだ!(笑)それはどういう風に?

珠蘭        女の子から結構イジメられていて、少年時代の自分はそれで結構苦しくて。小学5年生から中学2年の後半くらいまでずっと不登校だったんですよ。小学校の頃はイジメが原因ではなかったんですけど、だんだん周りの子たちと合わなくなってきて、行きたくないなって。中学はイジメでした。

伊島        女の子からって、それってじつはモテてたってわけじゃなくて?

珠蘭        それは今になって思いますよね(笑)

伊島        はっはっはっは(笑)

珠蘭        妬みじゃないですけど、それもあったんじゃないかなって。いろんなことを思い出していくと「あれってもしかして?」ってことは結構あります。

伊島        ボクも子どもの頃のことを思い出すと、気になる子とか好きな子ほどちょっかい出したくなっていたかな。そういうことってあるじゃない?

珠蘭        そういうことなんですかね(笑)

伊島        今から思えばね(笑)

伊島        将来はどんなことやりたいんですか?

珠蘭        基本的には映画をずっと作って行きたいですね、監督として。

伊島        今までに本編は撮ったことあるんだっけ?

珠蘭        短編だけです。本当は今年、夏の終わりあたりに撮る計画をしていたんですけど、コロナも相まってちょっと難しいということになって、今のまま行くと来年のアタマくらいに撮れるかどうか、様子見って感じですね…。

伊島        コロナでいろんなことが変わっちゃったよね。ちょっと、光がいいので写真撮っていい?(笑)

珠蘭        はい(笑)

伊島        インタビューと僕が取った写真とで雑誌を構成することになるんだけど、あなたが作った作品とか写真も載せてもいい?

珠蘭        大丈夫です。

愛媛国際映画祭 2021「愛顔感動ものがたり映像化コンテスト」審査委員特別賞 受賞受賞作品

伊島        さっきもちらっと話に出ていたけれど、ミックスルーツが入っていることで良かったこととか、悪かったこととかある?

珠蘭        良かったことは、血に関して言えば、シンプルにドイツと台湾もちょっと入っているので、自ずと海外への興味は小さい頃から持ちやすかったですね。だから映画でも音楽でもスポーツでも、海外のものを見るのは普通の人たちよりも回数は多かったですね。あとはまあ全然モテないんですけど、「モテそうですね」って言われるとか(笑)

伊島        でも海外には行ったことないんだよね、旅行でも?

珠蘭        ないです。チャンスはあったんですけれど。それこそサッカーをやっていた時はイングランドにサッカー留学をしようと決めていたこともあって、マンツーマンの英会話にも通ったり。「じゃあ行こう」と決まった時に怪我をしてしまって、全部無しになってしまいました。

伊島        怪我っていうのは、どんな怪我をしたの?

珠蘭        腰ですね。慢性的な。背骨って普通S字になっているのに、僕は一直線で、そうなるとダメージを受けやすくて。ヘディングの競り合いで腰から落ちて、それから動けなくなってしまって。ギックリ腰に近かったです。それは高校の時だったんですけど、怪我のあとは60分の授業が座っていられなくて、ずっと保健室にいるようになって。学校に行っても保健室にいるだけなので、さらに学校に行かなくなっちゃって。ずっと家で勉強していました。

伊島        ほーう…

珠蘭        修学旅行も、沖縄か台湾で選べて「台湾きたー!」と思ったんですけれど、そんな状態で行きたくないと思っちゃって。ルーツがあるからこそ、ちゃんと自分が感じた時に行きたい、自分のお金で自分の足でちゃんと行きたいというひねくれた考えがあって、結局沖縄に行っちゃいました…(笑)

伊島        そうなんだ!結構ひねくれているねぇ(笑)

珠蘭        だからドイツも台湾も行けてない。行くことにはなると思うんですけど、どこかのタイミングで。

伊島        そう思ってたらコロナになっちゃったしね。

珠蘭        そうなんですよね。その判断は間違っていないと思うんですけどね。

伊島        インタビューした人に聞こうと思っていることがあるんだけど、「ミックスジュースをあなたが作るとしたら、こういうジュースを作って飲みたい!」あるいは「こういうミックスジュースを作ったら美味しいんじゃないか」っていうのを提案して欲しいんだよね。それをボクが作ろうと思っていて。

珠蘭        おーーなるほど!!ちょっと待ってくださいね…。てことは、果物じゃなくてもいいってことですか?

伊島        まあ、いちおう飲めるものなら(笑)組み合わせは自由。果物とか野菜とか。そうじゃなくてもいいけど…

珠蘭        じゃあ果物は…。桃。

伊島        桃。

珠蘭        バナナ。

伊島        バナナ。

珠蘭        キウイ。

伊島        キウイ。

珠蘭        くらいかな。

伊島        その三種類でいい?

珠蘭        そこに…。

伊島        そこに?(笑)

珠蘭        どう反応するかわからないですけれど、黒糖。

伊島        黒糖ね。

珠蘭        これ、でも美味しそうじゃないですか?

伊島        まあ美味しんじゃないの。桃1:バナナ1:キウイ1でいい?

珠蘭        桃多めにしましょうか。

伊島        桃2:バナナ1:キウイ1、黒糖はどれくらい?

珠蘭        2。

伊島        2っていうのは、塊で?それともスプーン?

珠蘭        どうしようかな。

伊島        塊だと混ざるのかな?

珠蘭        ミキサーでやれば、若干粒がぽろっとしていてもいけるのかなと。

伊島        あー。じゃあ塊2個にしてみようか。

珠蘭        3個で。

伊島        3個ね(笑)オッケー。あと、これはジュースと関係なく好きな食べ物は?

珠蘭        肉ですね。それとナス。野菜のナスが好きです。

伊島        ナスね、美味いよね。肉はやっぱり焼肉とか?

珠蘭        そうですね。

伊島        自分で料理したりする?

珠蘭        前はしていましたけど、いまは全くしていないです。

伊島        今は一人暮らし?

珠蘭        実家が川崎なんでそっちにいるか、目黒に一部屋借りています。

伊島        実家には誰がいるの?

珠蘭        お母さん一人です。あと猫がふたり。

伊島        兄弟はいないんだっけ?

珠蘭        一人っ子です。

伊島        じゃあお母さんは寂しいわけだ。

珠蘭        「あんたがいなくて楽だ」って言われます、猫もふたり居るので(笑)それで充分だって言ってます。とは言え、帰らない日が長くなるとLINEで「次、いつ帰ってくるの?」って。可愛いなって(笑)

伊島        なるほど(笑)お父さんは?

珠蘭        両親が高校の時に離婚していて、お父さんは実家でおばあちゃんと新しい彼女と暮らしています。

伊島        二人とも東京というか、首都圏の人なんだ。

珠蘭        そうです。

伊島        今は毎日何しているの?このコロナの間。

珠蘭        ちょっと前まではワリと仕事があったので現場行って忙しくしていたんですけど、今やっと落ち着いてレタッチばっかりやっています。それしかやっていないです。あとは映画観て…。映画館も間にひと席空けてはいますけど、やっと行けるようになったので。

伊島        そうだよね。あれ意外と楽だよね、両隣に人がいないって(笑)

珠蘭        荷物置けるし(笑)

伊島        そうそう。映画館は大変だろうけどね(笑)でもこれいつまで続くんだろうね。

珠蘭        もういいと思いますけど…。コロナのことになると話が長くなりそうなのでやめておきます(笑)思想の問題で。

伊島        そういう話も好きだけどね(笑)

珠蘭        えっ?それだけで一日喋れちゃいますよ(笑)。実際、今まであった仕事が僕も無くなっているので、企業なんかだと社内で解決しちゃったり…今までは頼んでくれていたのに内部で完結しちゃうことが結構多くて、打撃は受けています。

伊島        そうかぁ…。それはさて置き、いま作りたい映画はどんな映画なんですか?

珠蘭        今までの自分の経験を内容に入れたもので、ロードムービーなんですけど。

伊島        ロードムービーね。

珠蘭        主人公が旅に出るっていう。それを今書いています。

伊島        結構旅していたの?

珠蘭        そうですね、国内ですけど。

伊島        それはどういう形で?

珠蘭        ひとりで。

伊島        交通手段は?

珠蘭        電車とか、バスとか、飛行機とかですかね。

伊島        じゃあ、まずここに行ってその後ここに行ってとか?長く旅していたというわけではなく?

珠蘭        単発で。それこそ学校に行ってなかったときは、学校行かずにいろんなところに行っていました(笑)。面白かったです。沖縄に半月行ってたりとか、村に住んでいたりとかしていました(笑)。

伊島        そういう時は何をしていたの?

珠蘭        沖縄にいた時は、お母さんの親友があっちに移住していて、自分の家で「島草履」っていうビーチサンダルみたいなものの職人をやっていたので、それを住み込みで手伝っていたり。沖縄では何もしてなかったですね。昼まで寝て、起きて、ちょっと海行って、ぼーっとして帰ってきて、ちょっと作業して、飯食って寝る、みたいな(笑)行く場所場所によって行動は変わりますね。

伊島        いつもそういう知り合いのところに行っていたの?

珠蘭        知り合いはその時だけです。あとはもう場所目当てで。山登りに行ったり、温泉街を求めて行ったり。

伊島        印象に残っていることってある?

珠蘭        岩手に行ったときかな。震災の時に行ったんですよ。ちょっと経った時に行って、あの時は本当に何も情報がなくて、とりあえず行こうと思って行ったんですけど、在るはずの線路が崩れていて運行してなくて、その手前の変なホテルに入ってご飯食べて帰ってきたんですけど。それが震災から一年くらい立った頃かな?もうわりと整備されているのかなと思ったら、まだ街も手がついていなくて。実際行ってみないとよく分からないから、実際に降り立ったときの潮の香りとか、鉄の曲がるはずのないガードレールがグニャグニャになっていたりとか、家があったはずのところになかったりとか。赤いスプレーでマルとかバツとか書かれていて、これってなんだろう?とか。いろいろ感じるものがあった中で一番グッときたのが、一軒家があったであろう場所を素通りしそうになった時に、一箇所だけ崩れていないところがあったんです。なんだろうと思って見に行ったら、残っている形とか場所から推測するに、玄関なんです。他の大部分は全部流されているのに、玄関だけがまだあるって…

伊島        玄関がどんな形で残っていたの?

珠蘭        踏み入れる時のタイルとか、ドアの下の部分の段差で明らかにドアがあったであろう場所とか。そこだけ綺麗に残っていて。

伊島        へえ〜…

珠蘭        帰ってくるところが残っているんだなって。いろんな思いに駆られて。それは強く覚えています。

伊島        そういう体験から感じたことが映画になるのかな。

珠蘭        今回は入らないかもしれないですけど、違う形で何かあるかもしれないですね。

伊島        映画楽しみにしています。

伊島        ミックスってことで悪かったと思うことは?

珠蘭        これは「職のミックス」に関してなんですけど。わりとなんでもやっているんです僕。最初俳優で、そのあと映像に行って写真に行って。今は映像と写真どっちもやっているんですけど、結構「結局どっちなんだよ」って言われることが多くて。どっちに比重を置いているのかっていうのを意地悪っぽく言われることが多いです。人によると思うんですけど、ひとつのことをやり通すっていう美学も素晴らしいと思うし、昔はそっちに憧れていましたけど、でも実際のところ、やろうと思ってやってみても全然ダメだったんです。自分は一つじゃなくて二つあることで、いい意味でどっちかに逃げられるというか。片方をずっとやっていて行き詰まった時に、ちょっと気分を変えるためにもう片方をやることで、行き詰まっていた方に何か新しいアイデアが生まれる。それで自分としても生きやすくなるし、仕事もしやすくなる。自分がいい状態でいられる。そのバランス感覚というか、そうしないとやっていけないんで。一つを突き詰めていると潰れちゃうタイプの人間。そこは周りの意見とのギャップを常々感じています。変わった根っこをしているので、いろんな花を咲かせたいと思ってるんですよ(笑)

伊島        それ、ボクもそうなんだよね。写真から始まって映像も撮るようになって、その上雑誌も作っていたので同じようなことをよく言われました。

珠蘭        そうなんですよね、僕も「オッドマガジン」を作るって言ったら、来年映画を撮る子とか他の人たちに「大丈夫?」って言われる。

伊島        残念だけど今のうちに言っておくと、そういうことやっているとだんだん仕事が来なくなるよ。それはボクが経験済み(笑)

珠蘭        そうですよね…でもしょうがないですよね、それをやっていかないと生きていけないですよね。誰が決めたのって感じですよね。映像とか映画ではできないことがあるからマガジンをやる。それぞれでやりたいことがあって、もちろんやりたくないこともあって。でも生きて行く上で、表現するためにやりたいことが僕は出てくる。一つに固執することはないかなって。

伊島        それでいいと思うよ。あとは作品でそれを示していくしかないよね。

珠蘭        絶対的にそれが良くないとダメだと思うし。

伊島        そうだよね。

珠蘭        そういうことです。…以上です(笑)

伊島        そそのまま突き進んでください(笑)

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