0014_20_12_16 友沢こたお Tomozawa Kotao

0014 友沢こたお

芸術家。フランス、ボルドー出身。東京藝術大学在学中。自分自身の顔やドールにスライムを纏わせた画像を油絵に昇華させた作品を精力的に制作。次々と繰り出される作品は発表と同時にすべて完売するという凄まじい人気。そのキュートな容貌から生み出される他に類を見ない特異な作品とのギャップが、見る者の心を大きく揺さぶる。

伊島薫

伊島 僕、あなたのことを今まで全然知らなくて。これまでいろんな人にインタビューをさせてもらったんだけど、Twitter繋がりでいろんなミックスの人が出てくるから、面白そうな人をフォローしていったんです。それでこたおさんにたどり着いて、作品がアップされているのを見て、「なんだこれは!」って。写真なのかなとかね。でも、写真じゃないみたいだし、CGなのかなと思ったりしていて、そしたら、ちょうど個展があるというので、じゃ見に行こうと。それで実際に見させてもらったら、かなり衝撃を受けたんです。

こたお わあ、うれしい。

伊島 なんかこう、心がすごくざわつかされたというか。やっぱり僕はね、アートって人の心をざわつかせるものっていうのが、本当のアートだと思っていて、ただ「きれいだね」とか「素敵だね」じゃなくて「なにこれっ?」て、分かるような分からないような、ちょっと気持ち悪いような気持ちいいような、そういうものに久しぶりに出会ってね、「これはすごい!しかもこれ油絵じゃない!」ってね。かなりいろんな意味で衝撃を受けたんです。それですぐ次の日にメールさせてもらいました。

こたお 本当にうれしかったです。ありがとうございます。

伊島 そんなわけで、実際今までまったく知らなかったし、それでいろいろ見てたら、漫画家のお母さんのこととか、以前芸能活動やってたとか、いろんな情報が出て来て、このコは一体何者なんだっていうのをすごく感じて、まずあなたは一体何者なんですかっていうことを、いちから聞きたいと。逆にあんまり予備知識を入れないようにして今日に至ってるので、いろいろいちから根掘り葉掘り聞くかもしれませんが、よろしくお願いします。

こたお お願いします。

で、あなたはいったい何者なんですか。

こたお 人間です。めっちゃ普通の女の子だと思ってるんですけど。

伊島 今、こうして目の前のあなたを見てるかぎりはそうですね。

こたお 母親が変わってる人で。母と2人で一つみたいな感じでずっと長いこと過ごしてきて。やっぱりその母の変なエッセンスっていうのを長期的に受けてるから、もしかしたらちょっと変わったコなのかもしれないけど、まあ健康ないいコかなと。ずっと絵が好きで。そんな感じです。

伊島 実際に今あなたを見ていても、そのとおりだと思います。健康っていうのは、肉体的にも精神的にも、あんまり病んでたりとか、ちょっと曲がってたりっていうのはなさそうに見えるよね、とりあえず見た目は。でも実際中身はどうなのかなって。

こたお かなり繊細で浮き沈みは激しくて。でも、それをないようにする力を得てしまっていて。そういう面は絵に出てるかもしれないです。なにか、覆うことで安心感を得るじゃないけど、絵を描くっていう行為は本当に自分そのものを投影しているような感じがあって安心するんです、絵を描いていると。

伊島 逆に言うと、中身はすごくセンシティブで傷つきやすいっていうことだよね。

こたお そうですね。それを絵を描くことで分散させてるという感じかな。

伊島 逆にバリアを張ってるということかな。なんかこう、さっきも言っていたようにやり過ごす方法を見つけ出すんだっけ?

こたお ないようにする。水面みたいに波風を起こさないように。

伊島 そういうすべを覚えた?

こたお すべがあります。それは芸能活動の経験でできたものかもしれないけど。内気です。

伊島 今、話してると、そんな感じが確かに伝わってきますね。

こたお 恥ずかしがり屋です。

伊島 そうだね。ちょっと猫っぽい。僕はちょうどこのあいだから猫を飼い始めて…しかも黒猫なんです。今日ちょうどあなたが全身黒だから、まるでウチの猫を見てるって感じがする。

こたお うれしい。猫は好き。

今までなにを描いてもすごいぬめぬめしちゃうっていう悩みがあって

伊島 しかし正直言って一つ聞きたかったのは、最近のスライムの作品が僕は一番好きというか、あそこに一番引かれるわけなんだけど。ああいうのってどこから来てるのかな?

こたお あれは、わたし芸大にいるんですけど、受かる前は全然ああいう絵は描いていなかったんです。それまでは心の中の風景とかをワリと描いていて。でも、大学に受かったら描くのが怖くなっちゃって。まわりがみんなすごいと感じて筆を持つのが怖くなった時があったんです。で、いったんそこでそれまでやってきたことはリセットじゃないけどちょっと絵から離れてたっていうのが何ヶ月かあって。でも、『芸祭』っていうイベントがあって、そこでなにか展示しなきゃいけないってなった時に、あらためて絵を描かかなきゃ、なにをしようかなって考えたとき、ちょうどちょっと心が大変な時だったんです。

伊島 なにがあったの?

こたお いろいろな活動の中で、なんというかすごくつらい思いをしたりということがあったんですけど。家でその時たまたま目の前に黒いスライムがあったからっていう、それだけなんですけど。なんかその時の私は、気付いたらそれを顔に被ってたんです。

伊島 自分で?

こたお 自分で。どうしてか分からないんですけど。その時すごく安心したんです。なんか戻ったのかな。胎児の記憶?なのか分からないけど。なにか実態がない感じをいつも、所在がないとか、体の感覚が失われてる感じとか、そういうのがぜんぶ、そのスライム被ったときに、なくなった感じ。なんでもよくなった感じ。気持ちいいな、とろとろって感じでっていうことがあって、それは、なにも絵とは関係なくて、ただ被ってるだけだったんですけど。なんか描かなきゃって時にその記憶を思い出して、ちょっと描いてみたら面白いかもと思って。今までなにを描いてもすごいぬめぬめしちゃうっていう悩みがあって、それがコンプレックスであんまり描きたくないってなってたんですけど、ぬめぬめしたものを描いたらすごい上手く描けちゃって、自分を解放できたんです、その時。自分が駄目だって思ってた部分も、めっちゃいい方向に全部行って、こんなに気持ちいいんなら、絵を描くのって楽しいに違いない。油絵の具とも一体化した感じがして。で、楽しく描いて、これはもっとシリーズ化できるって思ったんで、毎回、その時その時の気持ちに合わせて、スライムの硬さとか色とかを自分で作って、いろんなかぶり方をして描いてました。

伊島 チューブ状になって顔に巻き付いてたりとか、鼻とか口に入ってたりとか、あれもああいう形にもなるの?

こたお あれはなんか、ああいうゼリー状のやつがあるんです。ちょうどコロナ禍になってから描きはじめて。なんかちょっとデジタルっぽい感じがいいかなって思って描いてたりしてたんですけど。

伊島 あれも全部、実際にやってるの?

こたお はい。全部自分で実際にやるっていうのを私は大事にしてます。

伊島 ほお。やってるんだね。

こたお はい。

伊島 で、写真撮るの?

こたお はい。写真撮ってます。

伊島 髪の毛はなくしたりしてるよね。

たお あれは、絵の上でやっちゃったんですけど。基本的にその皮膚感覚、自分の粘膜とか、鼻とか口とかに入ってくるんですけど、それって。そういう特殊な記憶。やっぱり部屋で、服汚れちゃうんで、全裸になって、こうワーっとやって異様な光景ではあるけど、やっぱり自分だけの大事にしてきたことって、皮膚の記憶とかも、なにか絵に落とし込めるかもしれないって思うし。いわゆるただの写真だと、変態というかやばい感じの女みたいな写真になっちゃうんだけど、油絵はそれを美しく表現できるんじゃないかなって。自分で描いていてそう思います。

伊島 いや、そこがちょっとずるいなって思うんだよね。僕も写真で女の人にね、針を刺したり糸で巻いたりとかしてるんだけど、けっこう変態にとられるんだよね(笑)。

こたお いや、でも私、けっこう油絵の具を意のままに操れないんです。油絵の具ってすごく曖昧で、ここの線を引きたいと思ってもそこじゃない所が一緒に歪んだりするんです。すごく曖昧さのある画材なんで。絶対自分がこうやりたいっていうとおり、100パーセントそうはならなくて。自分の今いる1秒1秒が落とし込まれてるような感じがあって。油絵との出会いが、私にとってはすごく貴重なものでして。

伊島 そう、だからあの作品は油絵っていうのがほんとに面白いところでね。油絵でああいう絵を描いてる人ってあまりいないよね、きっと。

こたお どうなんでしょうね。すごい上手い人もいるけど。私は上手くは描けないのでなんか特殊な絵になってると思います。

伊島 でも、それがすごくいいんだろうね。多分、普通に考えたら、これってやっぱりアクリルだよねって思うか、そうじゃなかったらCGなのかなとかって。ネットに上がってる画像で見るかぎりは大体みんなそういうふうに思ってると思うんだよね。

こたお 実物とだいぶ違う感じはしてます。

伊島 ね。いや、あれが油絵っていうのがほんとに面白い。

こたおって名前付けたのもお父さんで。島の名前なんですけど

こたお 私、すごい視野が狭くて。こんぐらいしか、いつも見えてなくて。だから、すごい意識が、やばいぐらい集中しているところと、すごいパーって終わらせたところと、絵の中で、全部違うんです。私、半分フランス人なんですけど、そういう所はフランス人っぽいのかなと。

伊島 フランス人っぽいっていうのは、どういうことろ?

こたお すごく集中して入り込んでやりたいというのがすごくあって、その他のまわりはパーって、どうでもいいみたいな。

伊島 ほう、フランス人って、そういう感じなの?(笑)

こたお ずっと日本で育ってるから分からないんですけど。親によく「あんた、フランス人やわ」って言われます。

伊島 そうなんだぁ。面白いねぇ。

こたお ちょっと乱雑なところがあります。

伊島 やっぱりそういう、日本人とフランス人が混じってるっていうことで、だから良かったっていうこともあれば、だからちょっと困っちゃうんだよね、みたいなこともあったりするの?

こたお 私、日本語しかしゃべれないし、日本で育ってて、すごく心も日本人らしいんですけど、やっぱり初めて会った人との最初の会話は、9割ぐらい「なにかしゃべれるの?」みたいな。それに対していちいち「あんましゃべれなくてですね」っていうのも、まあたいへんというか。「髪、本当の色なの?」、「目も本当の色なの?」みたいな。私それまで、なにも思ってなかったけど、今回この『ミックス・マガジン』のお話をいただいて、ミックスについて、自分はどうだったのかなとか考えたら、毎回その会話してるなと思って。なんじゃこりゃって感じでしょうがないけど、私は絵とか描いていて、これが私っていうのがあるからあんまりそれは苦しくはないんですけど。

伊島 この『ミックス・マガジン』をやろうと思い始めてから、いろんなミックスの人と話をしていると、それはもうよく聞く話だよね。

こたお そうですね。だからそういうミックスの人とかと会うと、安心します。特になにもしゃべれないっていう人は安心します。

伊島 僕も実はミックスなんです。僕、親父が台湾で、母親日本人だから。見た目では誰も気づかないし、名前を見てもまったく分からないしっていうことで、そういうストレスはなににもないんだけれど。でも、逆に言うと、例えば僕の親父の場合やっぱりそうだったし、在日韓国人の人とか、見た目じゃなくって、だからこそ、言わなきゃ分かんないんだけど、言ったほうがいいのか、言わないほうがいいのかとか、それはそれで苦しい思いをしてると思うんだよね。

こたお 本当ですね。

伊島 だけど、僕の感じてることを言うと、ミックスしたほうが絶対いいんじゃないかと思う。なんかいろんな動物、犬とか猫とかを見ていても、混じってるほうがなんか面白いっていうか、かわいかったりするじゃない。人間もどんどん混じっていけばいいのになって思うんです。

こたお そうですね。私もそう思います。

伊島 お父さんは。

こたお フランス人。なんかあんまりいなくて、小さい時から。でもなんか、一週間ぐらい家にいたときがあって、やっとお父さんができた、みたいな感じで。本当にうれしくて。

伊島 それ、何歳ぐらいの時?

こたお 2、3歳ですかね。言葉が通じないから、お父さんと私。フランス語そんなにしゃべれてたわけじゃなくて。フランスに住んでたんですけど、5歳まで。

伊島 5歳まで、フランスだったのね。

こたお はい。あんまりしゃべれないけど、これはお父さんなんだ、みたいな。すごいうれしかったけど、またいなくなっちゃって。日本に来て5歳ぐらいの時、幼稚園に1度だけお父さんが迎えに来たことがあって。私、お父さんはもういないって思ってて、みんなはお父さんがいてうらやましかったけど、すごいなんか、うわ、ピョン、抱きつき!みたいな。すっごいうれしかったんです。でも、それから会ってないです。

伊島 幼稚園の時から?

こたお はい。船に乗ってどっかに行っちゃったって言われました。船乗りで。

伊島 船乗りだったの?

こたお はい、船乗り。船長で歌手もやってて。不思議な人。

伊島 面白いな。

こたお こたおって名前付けたのもお父さんで。島の名前なんですけど。タイの。

伊島 こたおって、島の名前なの?

こたお はい。

伊島 どの辺にあるの?

こたお タイのリゾートの島で、タオっていう。コが島です。

伊島 タオっていう島の名前なのね。

こたお 私が産まれる前に両親がそこに旅行に行って、お父さんが「ここの名前を付けよう」って言って、きれいな島だったから。で、お母さんは、「本当に付けるの?」って。なかなかいないとは思うんですけど、こたおって。でも、本人があとで選べるようにって、選択肢をもう二つ付けてみようって、こたおの後にマリオンとアンナが入っていて。マリオンは海。お父さんが船乗りだったから。アンナはなんか出生届の締切がギリギリで、焦ったお父さんが「アンナー!!」って。たぶん「A」から考えたんじゃないかな(笑)。なので戸籍上は、こたお・マリオン・アンナなんです。

伊島 そうっだったんだ。

こたお はい。マリオンは漢字なんですよ。草に末って書いて茉、あとは里と音で、茉里音。アンナはカタカナで。名前の中に平仮名と漢字とカタカナが全部入ってる。毎回テストの時にそれを書いて(笑)。

伊島 でも、最終的には自分でこたおを選んだの?

こたお うん。なんかみんなからずっと、こたおって呼ばれてたから。

伊島 取りあえずつかみはいいよね、こたおは。僕、最初Twitterで初めてみた時に男だと思ったの。

こたお よく言われます。

伊島 ね。男なんだろうなと思っていて、で写真を見たら、えっ?って。しかもこういう顔じゃない。だからきっとこれ、男なんだけど自分の好きなタイプの女のコをアイコンにしてるんじゃないかって思ったんですよ。

こたお なんか、よく言われます。おじさんだと思ってたって。

伊島 だから本当に、あの個展に行くちょっと前まで男だと思ってました。

こたお なんか絵の感じとかからも、中年男性だと思って見にきてくれる人が多いんです、ありがたいことに。でも、「え? 女性なんですか?」ってけっこう言われます。

伊島 そうだろうね。とはいえ絵を見て、なんかこれ面白そうだと思って来てくれる人がやっぱり多いっていうのは素晴らしいことだよね。

こたお うれしいです。

伊島 いや、なかなか今ね、そんなにいないと思うよ。ネットに挙がってる絵を見ただけで、これ面白そうだなと思って観に行くっていうのは。やっぱりほとんどは知り合いだからっていう。しかも1時間でぜんぶ売れたんでしょ。

こたお そうなんです。すごいうれしい。

伊島 僕も2日目だったんだけど、行ってみて、これ幾らぐらいで売ってんだろうと思って値段見ようと思ったら、値段の所に全部赤いシールが貼ってあるから、なんじゃこれって驚きました。全部売れてるってこと?って。

こたお ホントうれしい。初めてだったんです、個展をするのが。ずっと緊張していて、情緒が不安定で。搬入の日もずっと寝れなくて。初日の朝行ったらすっごい人が並んでいて。わっ、うれしいって感じでした。

伊島 いや、素晴らしいことですよ。絵の力っていうのは、やっぱりちゃんとあるもんなんだなって思いました。

伊島 さっき言ったみたいに、これ写真なのかなとか、CGなのかなって思いながらも、ともかくどこかしら引かれるものがあるから行ってみようって思うわけですよ。逆にそれが実際にCGとかだったら、別にネットで見ていりゃいいわけだけど、これはなんか実際にこの目で見てみたいっていうふうに思わせる力がある。

いっぱいウンチ踏んじゃってたっていうのが

伊島 アンディという人物について聞きたいんですが。

こたお アンディは私のベビーシッターです。アンディ・ボリュスっていう、イギリス人でノイズ・ミュージックとかやったりしてる変わった人で。その人が家にスライムを置いてったんです。

伊島 一緒に展覧会やったりしてたみたいですね。

こたお 最初に個展を一緒にやりました。アンディって本当にヤバい人で、赤ちゃんの時からお世話になっていて。

伊島 ヤバいというのは、エキセントリックな感じ?

こたお うん。なんかもう、人形とか置いてあったら、カッターで頭切ってたり、結構破壊的。完全にノイズの人で。コラージュとか、気付いたらバーッとすごいのどんどん作ってたり、すごい格好いいんです。音楽も格好良くて。師匠みたいな感じ。アンディの存在は大きいですね。スライムとの出会いも、アンディがくれたし。いつも心にアンディがいて、アンディだったらどうするかなって感じ。

伊島 なるほど。ちょっとそのアンディに会ってみたいね。

こたお アンディは本当に面白いです。もう人類で最高に面白い。アンディ、すごいです。

伊島 今は?

こたお どこにいるんだろう。

こたお アンディは多分フランスにずっといて、年に1回ぐらい日本に来て、ライブとかして。そんな感じですね。

伊島 いつ頃まで、ベビーシッターやってたの?

こたお 5歳までフランスにいたんで、そのぐらいですかね。

伊島 フランスにいた時にベビーシッターだったの?

こたお そうです。その前からずっと母の友達で。

伊島 お母さんは当時フランスに住んでたわけですね。

こたお はい、住んでました。

伊島 それはお母さんがマンガ家になる前? 後?

こたお 多分後です。マンガ家を長く日本でやっていて、その後フランスに行って。母とはずっと一緒にいるけど、母の詳しい事情はあんまり知らない。どうしてお父さんと別れたかも知らないし、出会いとかも知らないし。

伊島 聞かないの? あんまり。

こたお なんか、気まずくて聞けない(笑)。すごい気になるんですけど。

伊島 気になるんだったら、聞けばいいのに。

こたお でもちょっと、そう。なんか「あんた、兄弟7人ぐらいいるかも」とか言われたりした記憶もあって、なんかちょっと聞きづらい。大事じゃないですか、お父さんのことって。けっこう小さい刺激でも、私、ワーってなっちゃうから。今、ミステリアスになってるけど。いつかは突き止めたい。まあ、ちょっとずつ喋ってくれてるけど。あと、会ってみたいですね、お父さんに。多分もう、80か90か、わかんないけど。

伊島 そんなお歳なんですね。

こたお 死んじゃったら会えないから、会いに行きたいです。

伊島 そうだね。そういう意味では早いほうがいいかもしれないね。

こたお フランスに行きたいですね。コロナとかもあるけど。落ち着いたら。個展で作品が売れたから、そのお金でちょっとフランスに行きたいですね。

伊島 それはそうだよな。最後にもう一回ぐらい飛び付きたいよね。

こたお 飛び付きたいですね。

伊島 5歳ぐらいまでの、フランスで暮らしてるときの記憶って、他になにかありますか。

こたお けっこうありますね、幼稚園とか。すごいアートの教育が良くて。手でペタペタとモネの描写を模写するっていうのをやるんです。ペタペタ、点点点って。モネって目が見えないからって、手でこうやってたんですけど、それをやってみよう、みたいなのとか、覚えていて。それをやった後にモネの家に行くっていう遠足があって。

伊島 いいね。

こたお そのモネの家の周りに落ちてるイチョウとか、覚えてます。あと、フランスはウンチがいっぱい落ちていて、日本と違って掃除しなきゃいけないっていうのがなくて、いっぱいウンチ踏んじゃってたっていうのが…(笑)

伊島 犬のね。

こたお そう。それからバゲットとクロワッサン。クロワッサンもいつも幼稚園帰りに買って食べたり。フランスの友達とパーティーしたり。すごい街の景色もかわいかったし、家もすごいかわいかったですね。うっとりします、思い出すと。なんかきらびやかな記憶が。

伊島 パリ?

こたお パリです。

伊島 じゃ、また、パリに住みたいとかっていう気持ちもある?

こたお まだ、行ってみないと分かんないけど、行きたいです。住みたいかと言われるとどうなんでしょうね。でも、多分母はそこでなにかがあって日本に戻ってきたから。そこはミステリーだけど。お母さんは「おにぎりが食べたくて返って来たんだよ」みたいなことを言ってたけど、なんかあったんだろうなっていう感じで。それはやっぱり、行って経験しないと分かんないから。やっぱり、自分のルーツはちゃんと見なきゃって思うので。

伊島 でももう自分の意志で、お母さんは関係なく、行きたければ行けばいいわけだし。

こたお そう。これからは身を任せながら、委ねて流れていきたいですね。

伊島 楽しみだな。

こたお 学校があるので、ちゃんとお勉強しながら考えていきたいです。

伊島 大学生であるうちはね。

こたお そうですね。

伊島 今何年だっけ。

こたお 今3年生(*インタビュー当時)なんですけど、院も行きたいなって思ってて。

伊島 そうか。でもこれからも絵は、ずっと描いていくわけだよね。

こたお もうなんか、赤ちゃんの頃からずっと絵ばっかり描いていて、絵と自分は多分一生離れないという、不思議な気持ち。なんかいつまで描くとかまったくなくて。息をするのと同じ感じなので。ずっと描いていたいなって思ってます。

伊島 楽しみ、楽しみ。次はいつ頃やるのかな、ショー。

こたお 1月にグループ展が三つあって、2月に銀座の阪急メンズで個展をやります。

伊島 あ、そう。すごいね。立て続けだね。楽しみです。作品は写真に撮ったりはしてるの?

こたお それは、iPhoneで撮って。

伊島 iPhoneで撮ってるだけ?

こたお そうです。

伊島 全部売れちゃってるわけだから、人のところに行っちゃったらもう手元に残らないよね。

こたお もう、会えないです。

伊島 画像は、残しておかないと。

こたお はい。まあiPhoneはある程度の大きさまでならきれいに印刷はできるんですけど。ちゃんとしなきゃって。

伊島 今、まだ21でしょ。21でこれほどの作品を作っていて、それがピークだったらイヤだよね。

こたお イヤだ。怖いです。毎回、その、やっぱり前のを超えるように描くっていうふうにしてるから。絶対同じようなことはやりたくないし、それは楽しくないので。ちょっとずつでもどんどん進化していきたいですね。

伊島 そうだよね。なんか変に完成度を求めるというよりは、変化していってほしいですね。

こたお そうですね。やっぱり、最初はもう緻密に上手くかっちり描きたいっていうのが強かったけど、最近はもう、やめ時、筆の引き時をけっこう意識していたり。いろんなアプローチがあるし、小さい刺激でも意識変わったりするから、もっといろんなものを見て勉強したいなと感じますね。大きさも、小さいものばっかり描いてたんですけど、最近自分の身長より大きなのとかも描いてみて、ぜんぜん違くてすごい気持ち良くて、楽しくて、もっとでかいのを描きたいぞって感じです。

伊島 いいね!

こたお 忍者が飛ぶやつみたいに、ちょっとずつチャレンジをして。もっと痺れさせたいし、自分も描きながら痺れたいし収まりたくないって感じです。このところ展示がすごいギューギューだったんですけど、ちょっとは落ち着いてきまして。今はここを頑張りたいからすいません、みたいな感じで修行をもっとしたいと思っていて。ちょっとスケジュールを調節して、来年は卒制があるので頑張ります。

伊島 そうか、それはとてもいいことですね。

こたお 今は絵を描いていられるだけですごく楽しいです。

伊島 いつもこのインタビューをした時には、その人に必ず自分の好きなミックスジュースを考えてもらうっていうことにしていて、要するにミキサーで作るんだけど、そこに何を入れたいかを聞いて、それを後で僕が実際に作って写真撮って一緒に載せるんですけど。

こたお ジュースは、果物を入れてやるやつですか。

伊島 そう。飲めるやつ。

こたお 概念とかじゃなくて。

伊島 じゃなくて。

こたお 実際に?

伊島 うん。スライム、入れちゃってもいいけど(笑)。

こたお イヤだ。ちゃんと飲めるやつに。本当に、素直においしそうなやつを考えればいいんですか。

伊島 はい。なにがいいでしょう。

こたお なんだろうな。マンゴーは最近おいしいなと思って。マンゴーと、桃、サクランボ。素直に好きな果物。あと、なんだろう。タピオカとか。

伊島 タピオカね。

こたお なんか、めちゃくちゃなってきた。あとはなんだろう。いろんな色のキラキラのこんにゃくゼリーとか。

伊島 キラキラのこんにゃくゼリー?

こたお 食感があったら楽しいかなとか思って。

こたお やっぱりタピオカはなしで。

伊島 タピオカなしね。

こたお けんかしちゃう。

伊島 マンゴー、桃、サクランボ、こんにゃくゼリー。

こたお おいしそう。

伊島 よし!じゃぁこれでいきます。なにか言い足りないことありますか?

こたお え? なんだろう。なんかいっぱいある気がするけど。

伊島 いっぱいあるよね、きっとね。

こたお 今回の個展ですごくたくさんの方から声を掛けていただいてて。毎回話し終わった後、なんか言い忘れている気がするんだけど、あんまり自分のことを発信するというか、言っていくことがあんまり得意じゃなくて。多分なんかいろいろありますね、まだなんか。

伊島 あるよね、きっと。僕の引き出し方がまだ下手だってことだね。

こたお いや。でもただいろいろ言ったとは思います。私より母のほうがすごいおしゃべりで、母は私よりめちゃめちゃ私のことを知ってるから、なんかひとこと言っても母がワーって言ったら「あ、そうそう」みたいな。私は内気な少女だから多分もっとなんか、変な子なのかもしれない。変なところがあるかもしれない。

伊島 多分そうなんだろうな。まさに猫と一緒で、長く付き合っていくといろいろ出してくるっていうパターンだよ、きっと。

こたお かもしれない。

伊島 よし、じゃあ写真を撮らせてもらうかな。

こたお はい。ちょっと、おめかしして。

撮影協力: mograg gallery

One comment

  1. Toshio Shiratani -

    こたおさんにやられました。
    なみちえさんも早くアップしてください。

    興味ある人をどんどん広げてくださいね。
    楽しみにしてます。

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